Hard Workin' Man: The Jack Nitzsche Story, Vol. 2 / Various Artists (Ace)2006/10/12

Jack Nitzsche Story, Vol. 2

実はぼくは、まだインターネット・エクスプローラはもとより、日本語版ネットスケープさえ存在しなかった90年代半ばにホームページをスタートさせていて。もう11年になるのかな。12年かな。とにかく、それ以来、タグもすべて手打ち、みたいなアナログな感じでちまちま個人ホームページを続けてきて。

おかげで、いまだタグを手打ちすることは苦でも何でもないわけですが。長くやりすぎてきちゃったものだから、過去ログの管理がやけにめんどくさくなっちゃって。最近はそのせいで更新もすっかりごぶさた状態。たくさんの方から、「お手数でなければ更新を…」とか「いいかげん更新しろってんだ、ぼけ」とか、かなり振り幅の広い叱咤をいただきました。すんませんね、ものぐさで(笑)。

で、ブログにしちゃえばどうか、みたいなメールもけっこういただきまして。そりゃそうだよね。このブログ時代に、タグの手打ちにこだわっている理由は何もないわけで。

てことで、試しにブログに移ってみることにしました。少しは更新のスピードも上がるかも。なわきゃないか(笑)。ありもののブログを利用させてもらうことにしたもので、デザイン的にはちょっと限界があって。わりと前のホームページの感触に近くカスタマイズはしてみたものの、他の人が作ったデザインを使うのはなかなか難しいっすね。地味にちょっとずつやってみます。やることは、これまでのホームページと同じ、気に入ったニュー・リリースCDとかを乱暴に紹介するだけだと思います。

さて。引越祝いの1枚は、ジャック・ニッチェもの。去年、英Ace編纂によるジャック・ニッチェの仕事集『ジャック・ニッチェ・ストーリー』が出たけれど。その続編が登場。同じくAceの編纂による本盤。ライナーも書いている編纂家、ミック・パトリックがいい仕事してます。

ニッチェが作曲、アレンジ、プロデュースなどで関わった全26曲中、初CD化が13曲。うち未発表5曲。第1集が62~79年の作品に限定されていたのに対し、こちらはニッチェのレコード化された初作品と思われる60年の音源から00年に他界する直前のものまで。

キャプテン・ビーフハートをヴォーカルに迎えた映画主題歌、おなじみ「ロンリー・サーファー」の元ネタとも言うべき習作、ドナ・ローレンが歌うマン/ワイル/スペクター作品、ジョン・リー・フッカーとマイルス・デイヴィスとタジ・マハールのジャムもの、ボビー・ヴィーやメリー・クレイトンの聞き慣れない音源など、燃えます。

Duets: An American Classic / Tony Bennett (RPM/Columbia)2006/10/13

Tony Bennett / Duets

80歳だそうで。すごいな。トニー・ベネット。

シナトラとも、ディノとも、かといってマット・デニスとか、メル・トーメとかとも違う。独自の節回しが本当にごきげんで。痛快で。切なくて。この人が過去残した膨大なオリジナル・アルバム群のうち未入手分を、ここ10年くらい、今さらながら必死に集め続けてます。シナトラみたいに、体系的にほぼ全音源再発されているわけでもないので、細かいところでけっこう苦戦してますが。

でも、新たに手に入れる盤手に入れる盤、すべてが素晴らしい。この人の豊かな歌心にはやられっぱなしだ。もちろん50~60年代の名唱の数々というのが基本だけれど。近年のものも全部よくて。一昨年の暮れにリリースされて今年グラミーを獲った『アート・オヴ・ロマンス』も最高だった。デイヴ・フリシュバーグ作の「リトル・ディッド・アイ・ドリーム」とか、もう何度繰り返して聞いたことか。

MTVアンプラグドに出たり、k.d.ラングと一緒にデュエット・アルバムを出したり。コンテンポラリーなシーンとも意識的に関わりを持っているように見えるベネットさんだが。別に若向きに自分のスタイルを変えるわけではなく。長年かけてしっかり確立した自らのたたずまいを崩すことなく、しかしどこにでも出ていく、みたいな。そういう堂々たる姿勢に頭が下がる。

で、この人、以前にもいろいろな同輩・後輩と組んだデュエット・アルバムを出しているのだが。またまた出ました。強力なデュエット・アルバム。最近はレイ・チャールズにしても、フランク・シナトラにしても、デュエット盤を出して他界…みたいな傾向があるので。なんかやだなぁ、という感、なきにしてもあらずですが。でも、仕上がりを聞いたら、まだまだベネットさん、元気いっぱい。もちろん全盛期に比べれば、もろもろ弱くなったところもあるものの。多彩な共演者にまったく負けない、見事な歌声で今回も楽しませてくれる。

ディクシー・チックス、バーブラ・ストライザンド、ジェームス・テイラー、フアネス、ビリー・ジョエル、エルトン・ジョン、セリーヌ・ディオン、ダイアナ・クラール、エルヴィス・コステロ、k.d.ラング、マイケル・ブーブレ、スティング、ジョン・レジェンド、ジョージ・マイケルなどなど、デュエット・パートナーは多種多彩。バーブラとかセリーヌとかダイアナ・クラールとかブーブレとか、わりと同業っぽい人よりも、ビリーやエルトンとのほうが実は立ち位置も近く、相性がいい感じ。

選曲はベネットの代表的持ち歌ばかり。競作仲間のスティーヴィー・ワンダーと「フォー・ワンス・イン・マイ・ライフ」をスリリングに掛け合ったり、ポール・マッカートニーと「ザ・ヴェリー・ソート・オヴ・ユー」をしっとり仕上げたり、「コールド・コールド・ハート」をカントリーのティム・マッグロウとデュエットしたり。あと、『SMiLE』でもカヴァーされていたことでおなじみの(笑)「アイ・ウォナ・ビー・アラウンド」をボノと歌っていて。まずベネットが先発して、ボノがそのあとを引き継いで、2番に入るところでまたベネットが出てきて。このベネットのフレージングが最高。ボノも思わずバックで「ヒューッ!」と声を上げちゃってたりして。盛り上がる。

この盤、国内盤にはアジアのスター、ワン・リーホンとのデュエット曲がボーナス追加されているのだけれど。実はもっとすごいボーナス追加盤があって。アメリカのターゲットで店頭販売のみで売られている盤には、今年のマイケル・ブーブレ、00年のダイアナ・クラール、63年のジュディ・ガーランド、そして88年のシナトラ、それぞれとのデュエット曲が入ってる。ブーブレ以外はライヴ音源。全23曲入りだ。こっちのほうが断然いいっすね。20分ほどのメイキングDVD付きの2枚組もあり。ターゲットの店頭販売のみなので、日本で入手するのはなかなか…なんて。今どきそんなこっちゃ誰も悩まないっすね。eBayとかあるからね。便利な世の中っすね。ぼくもeBayで手に入れました。

Nashville / Solomon Burke (Shout! Factory)2006/10/14

Nashville / Solomon Burke

誰でもいいんだけど。たとえばベックとか、ブルース・スプリングスティーンとか、ボブ・ディランとか。そういう人たちがアルバムで自らのカントリー・ルーツを明らかにしたりすると、いまだ日本では判断停止状態に陥るファンが多いみたいで。ほんと、いつまでたっても日本ではカントリーって音楽が誤解されたままだなぁ、と泣けてくる。

ロック・ファンですらそうなんだから、ソウル/R&Bファンともなると、もうカントリーなんてゴミ扱いだったりして。くそー。チミたち、いつか泣くぞ、まじで。

よく、ロックンロールは黒人のブルースと白人のカントリーとの融合…と大ざっぱに説明される。いまだにそう信じている不勉強な評論家さんたちも多いみたいだし。ぼく自身、ずいぶんと長い間、その程度の乱暴な説明で十分に納得してきたものだけれど。そうした大ざっぱな表現に感じられる“それまで互いに相容れなかった両極の音楽要素が一気に合体した”といったイメージは、どうやら事実とはだいぶ違うらしいってことが、いろいろな音楽に接したり、歴史をひもといたりしているうちにわかってきた。

人種差別が根強かった当時のアメリカの音楽市場的にはそういう流れでほぼ当たっていそうだけど。それはあくまでも商売的な話。音楽的に振り返れば、黒人のブルースなりR&Bが発展の段階ですでに白人音楽/白人市場の方法論を、時には否応なく、時には能動的に受け入れてきたのと同様、白人のカントリーもまた早い段階から様々な黒人音楽と対話を密に繰り返しつつ形作られてきたことは明白なわけで。

まあ、いいや。この辺のことを詳しく書き出すといつまでも終わらない。そのうちCRTかなんかで話すことにしますが(笑)。ぼくなんかがくどくど話さなくても、優れたカントリーと優れたロックンロールと優れたR&Bと優れたブルースには何の垣根もないってことを言わずもがなで思い知らせてくれる1枚が出た。R&Bの超ベテラン、ソロモン・バークの新作。その名もずばり『ナッシュヴィル』だ。

02年の復活作『ドント・ギヴ・アップ・オン・ミー』や去年の『メイク・ドゥ・ウィズ・ホワット・ユー・ガット』で、ボブ・ディラン、トム・ウェイツ、ヴァン・モリソン、エルヴィス・コステロ、ブライアン・ウィルソン、ニック・ロウ、ローリング・ストーンズ、ザ・バンド、ドクター・ジョンといったロック系アーティストの楽曲に自然体でアプローチして、素晴らしい歌声を聞かせてくれたバークさんですが。今回はその勢いでカントリーに真っ向からアプローチだ。

彼の場合、もともと60年代からゴスペル、ポップ、そしてカントリーの要素をR&Bシーンに持ち込んだ功績が評価されてきたわけだけれど。つまり、66歳を迎えた今もなお、変わらぬ姿勢でコンテンポラリーなシーンに切り込み続けているということだ。かっこいい。

バディ・ミラーがプロデュース。エミルー・ハリス、ドリー・パートン、パティ・グリフィン、ジリアン・ウェルチらがデュエット・パートナーとして参加。ギャリー・タレント、アル・パーキンス、フィル・マデイラ、バイロン・ハウス、サム・ブッシュら名手がバックアップ。ミラー、パートン、ウェルチ、グリフィンら参加アーティストの手になる楽曲のほか、トム・T・ホール、ドン・ウィリアムス、ジョージ・ジョーンズらカントリー界のベテランの作品、ブルース・スプリングスティーン、ジム・ロウダーデイル、ポール・ケナリー、ショーン・エイモスらルーツ・ロック寄りのシンガー・ソングライターたちによる楽曲など、新旧バランスよく配されている。

アルバムのラスト、タミー・ワイネットでおなじみの切ないバラード「ティル・アイ・ゲット・イット・ライト」を、ほぼ原曲に忠実なアレンジで歌っていて。これが特にしみる。しゃがれた、ソウルフルな低音ヴォーカルに、たとえばウェイロン・ジェニングズとかジョニー・キャッシュとかの姿が二重映しになる。R&Bとカントリー。それぞれの優れたパフォーマーどうしの間には、ほんと、何の違いもないのだなということを思い知らされる。胸にきた。

カントリーとソウルの融合というと、まず頭に浮かぶのがレイ・チャールズかな。彼の場合は壮麗なストリングスやスウィンギーなビッグ・バンドをバックにカントリーの名曲群を歌って、カントリーともR&Bとも違う、見事ブルージーな音楽を作り上げてみせたわけだけれど。ソロモン・バークはそれとまた別の、よりストレートな、アーシーな、生々しいやり方で、聞き手のつまらない先入観がいつの間にか作り上げてしまった音楽の垣根をぶちこわしてくれる。

There Is A Season / The Byrds (Columbia/Legacy)2006/10/16

There Is A Season / The Byrds

世界的にレコード/CD業界全体が不況と言われているせいか。再発に関しても、一時のような勢いがなくなってきたのは事実。CDというメディアで、セールス的にそこそこの成績が目論める盤は大方再発され尽くしたってことかとも思うけど。

いやいや。権利関係をクリアできず出せない盤は結局いつまでたっても出ないし、一方で、出せる盤はボーナスが新たに追加されたり、リマスターされ直したり、紙ジャケになったり、何度も何度も形態を変えながら再発、再々発、再々々発が繰り返されるし。俺、『ペット・サウンズ』と『ロデオの恋人』のCD、いったい何枚ずつ、何パターンずつ持ってるんだろう? なんともちぐはぐな現状だ。

そんな複雑な気分を新たにしました。ザ・バーズの2つめのボックス・セット。正直、またかよ…と思いつつ、でもやっぱり買うしかないもんなぁ。思うツボか。

バーズのボックスというと、1990年に出た4枚組のやつがおなじみ。最初ロング・ボックスで出て、そのあと小さなサイズになって出直して。そのときはさすがに買い直しはしなかったものの。今回は内容を一新してのCD4枚+DVD1枚。じゃ、仕方ない。買わないとね。

とはいえ、かなりの曲数が前のボックスとダブっているのは当然。買うならその辺覚悟のうえで、どうぞ。ただ、前回のボックスが出てからバーズに関してはオリジナル・アルバム群が未発表音源入りのエクスパンデッド仕様で次々リリースされたり、未発表ライヴ盤が出たりしたので。その辺の新規音源を視野に入れつつバーズの歴史を再構築した、と。そんな形になっている。ライヴ音源、ラジオ音源など5曲が未発表もの。デビュー前、ジェット・セット、あるいはビーフイーターズ名義の音源に始まる64~90年の音源全99曲。映画のサウンドトラック用の別ヴァージョンや、やはり映画に収められたライヴ・パフォーマンスの音源なども入っていて貴重だ。

で、今回はDVD付き。目玉はこっちか。65~67年のテレビ出演映像が10曲。口パクばかりだし、全部で30分弱だし。けど、やはり動いているバーズの姿には圧倒的に目を惹かれる。もうちょい他にも映像が残っているはずなので(ブート映像は残っているんだから…)、その辺もなんとかならなかったもんかなとも思うけど。もちろんこれだけでも十分コーフンものです。でも、コンピュータのプログラムみたいに、差分ファイルとか、そういう形でボックス・セットをアップデートできないもんですかね。ぶつぶつ…。

Swamp Music: The Complete Monument Recordings / Tony Joe White (Rhino Handmade)2006/10/19

Swamp Music: The Complete Monument Recordings / Tony Joe White

第2回歌舞伎町ボブ・フェス、楽しかったです。mixiコミュのほうにも書いたことだけれど。この youtube 時代、珍映像自体はそれぞれ家にいてもパソコン上でわりと気楽に楽しめるわけだけど。大勢集まって、鑑賞ポイントを共有しつつ、でかい画面でみんなで爆音で楽しむというのは、またそれなりに違った味わいがあって。やっぱ、いいすね。

で、まあ、ディランといえば、ハーモニカで。生ギター弾きながら、ハーモニカ・ホルダーに装着したブルースハープを吹く姿が、その昔、やけにかっこよく映ったわけですが。ハーモニカ・ホルダー使いの中でぼくがいちばん好きなのは、実はディランではなくて。この人、スワンプ・ミュージックの王者、トニー・ジョー・ホワイトです。もちろんトニー・ジョーも生ギター弾いたりすることも多いのだけれど、かつて、彼がデビューしたばかりのころによく目にした写真は、座って、ギブソンのセミ・アコ弾きながら、ハーモニカ・ホルダーを首にかけて、ブルース・ハープをぶわ~っと吹いているお姿で。

おー、こういうのもありなんだ、という痛快な気分がまだガキだったぼくの胸を躍らせたものだ。ディランのおかげでできあがってしまった、ハーモニカ・ホルダーといえばフォークの道具、みたいな先入観を軽々と吹っ飛ばしてくれた。

そんなトニー・ジョーの初期音源を集大成した箱が出た。副題の通り、モニュメント・レコード在籍時の全音源集。69年と70年に出た3枚のオリジナル・アルバムを中心に、同時期の未発表音源をたんまり詰め込んだ内容だ。70年のワイト島ライヴも7曲入っている。未発表音源は全36曲。うち、別ヴァージョン4曲。69年、パリでの弾き語り音源が10曲。残りは自作、カヴァー交えたほんとの未発表曲。いやー、くらくらする。これらの音源をオリジナル・アルバム3枚の紙ジャケと、懐かしきスコッチ・テープの箱を模した紙ジャケにぶちこんだ怒濤のCD4枚組だ。

まだスワンプ・ロック色の薄いポップなデビュー・シングルや、オーダム/ペン作、ビリー・スワン・プロデュースのセカンド・シングル、少しずつ独自のスワンプ・ロック・サウンドを強調し始めたサード・シングルなどもちゃんとシングル・ヴァージョンで収録。うれしい。

でも、特にすごいのがパリ録音の未発表音源か。セミ・アコ、ハーモニカ、ヴォーカルだけの弾き語り音源なのだけれど、むちゃくちゃかっこいい。太く、渋い歌声は相変わらずごきげんなうえ、ギターでがっちりリズム隊の役割もこなし、ハーモニカでホーン・セクションの役割を代用し…。これで、まじ十分。最強にファンキー。ブルージー。トニー・ジョーの音楽の核のようなものがくっきり見えてくる。

この人が体現するスワンプ・ロックの重要なルーツはカントリー・ミュージックなわけだが。といっても、マウンテン・ミュージックと形容されることもあるタイプのピュア・カントリー音楽じゃない。マウンテン・ミュージックがイギリスのトラッド/フォーク・ソングの影響を強く継承しているのに対し、南部の湿地帯を中心に広まったカントリー音楽は、以前ソロモン・バークの盤を紹介したときにも書いた通り、白人も黒人も環境をともにしながら入り乱れて暮らしているという土地柄を反映してか、よりブルース色、R&B色が濃い。そんな音楽性にオブラートをかけることなく表現したトニー・ジョーの音楽を堪能するには欠かせない充実箱です。本人インタビューを中心にした充実のブックレットも貴重。

インターネット通販オンリーのライノ・ハンドメイドからの5000セット限定リリースなので買うのが面倒って人もいるかもしれませんが、いい音楽を聞くには多少の面倒を抱え込んだほうがいいっすよ。クリックひとつで安価に音楽ファイルそのものがハードディスク上とか携帯とかにやってくる利便性は素晴らしいけど、そのぶん最近は音楽の存在感がどんどん軽くなってるみたいだし。少しでも手間かけてパッケージを手に入れた音楽にはそれだけ愛着が湧くかも、です。つーか、これもクリックひとつみたいなもんだけど(笑)。いつものようにシリアル・ナンバー入りです。