Inside / Kenny Rankin (Video Arts Music)2008/02/07

Inside / Kenny Rankin

どれくらいの方がこのページをチェックしてくださっているのか、よく把握してないんですが。来てくださっている方、ほったらかし状態が続いていてすみません。

以前も書いた記憶があるんだけど。最近はとにかくブログ全盛で。ネット上は日記だらけ。ぼくが初めてホームページを作った95年には、こんな状況になろうとは想像もできなかった。膨大な“日々の雑感”が渦巻いている。すごいなぁ、と思う。皮肉じゃないですよ。まじにそう思う。ただ、言い尽くされていることだけれど、これだけ多くの人が、従来は自分のためだけにつけていたはずの日記というものを、今や外に向けて発信しているわけで。おじさんとしては、時代の凄まじい変わりっぷりをしみじみ実感するしかない。もちろん、それはそれで楽しいし、情報の送り手はプロで受け手はアマチュア…みたいな、旧態依然とした、窮屈な情報伝達構造をくつがえすスリリングな状況をもたらしてくれているわけで。むしろすごい躍動を感じている。それは確かなんだけど。

ただ、ちょっと、なんというか、溢れ過ぎちゃっていて。ここまでくると、どうしていいか、どこ行ったらいいのか、よくわかんない状態であることも事実。混乱してます。まあ、それがまたインターネットらしいってことかな。基本、それぞれが好きなようにこの底なし沼のようなスペースを利用すればいいだけだとは思う。

とはいえ、コンサートとか行くと、会場前でケータイ写真撮っている人の多いこと多いこと。アーティスト名の書かれた看板の前にひしめいている。飲食店に入っても、出てきた料理を写真に収めている人をちょくちょく見かけるし。ああ、みんな今晩ブログにアップするんだろうなぁ、すごいなぁ…と、怠け者のぼくなど、正直、圧倒されちゃう。その場でケータイからブログに送信している人も少なくない。確かに大統領予備選の状況なり所感なりをリアルタイムでブログにアップするニュー・タイプのジャーナリストもアメリカでは人気を博しつつあるようで。そういうジャーナリズムの在り方にはブログならではのスピーディな可能性とかを感じるけど。でも、予備選ならわかる。一般人の夜ごはんの情報はどうなの? そんなに急がないだろ。いや、この考え方が古いのか(笑)。そういうこともできるカジュアルで、かつ臨場感溢れるメディアなんだから。予備選の話だろうが、ごはんの話だろうが、基本は同じ。読んで面白ければ大歓迎。そういうひらめきを感じさせてくれる一般の方のブログも少なからずあって。プロ顔負け、ではなく、むしろプロには絶対実現できないような面白さを感じさせてくれていたりする。ぼくも楽しませてもらってます。ありがとうございます。お世話になってます。

ただ、そんなふうに日常を記録し発信できるブログというメディアが定着したことで、記録マニアみたいな人が増えすぎちゃった気もするのだ。これはちょっともったいないと思うんだけど。どうすかね?

たとえば、コンサートでメモとってる人とか、最近けっこういるでしょ。暗い客席で、必死に。どう見てもシロートさんというか、普通のお客さんで。これもきっと、ブログに書くためなんだよね。レポを。どこよりも早くコンサート・レポートをアップすることに命をかけているブロガーさんもいるそうで。まあ、それが生き甲斐なら、きっとメモとりながらその行為を心から楽しんでいるんだろうから。仕方ないけど。でも、余計なお世話であることを承知でぼくの考えを述べさせてもらうと。せっかくのコンサートなんだから。メモ帳なんかに無理に目を落としてないで、ちゃんとステージ見たほうがいいとぼくは思うのだ。あらゆる一瞬は繰り返し不可。あっという間に目の前を過ぎ去ってしまうんだから。目と耳と身体でライヴをしっかり体感して、脳裏にすべてをたたき込んだほうが絶対に楽しい。記録より記憶、ね。メモをとるなんて無粋なことは、プロが仕事で仕方なくすることだ。

そういえば、ぼくもそれなりにライヴ出演経験はあって。そのレポをネット上に載せてくれている方もいるんだけど。残念ながら、だいたい間違ってます(笑)。演奏曲目が違っていることはしょっちゅう。MCの書き写しに至っては思い違いも多い。これは俺の発言じゃないよって場合もあるし、話した意味をまったく理解してもらえてない場合もあるし。お前の話し方が悪いと言われればそれまでだけど。でも、それを読んだ人がコメント欄に、「詳細なレポ、さすがですね」とか書き込んでいたりして…。ちゃんと伝えられなかった自分が至らなかったんだなと思い知らされつつも、一方では、ブログに記録なんかしなくていいから、その瞬間、そのクローズドな環境のもとで発された情報をもっとしっかり受け止めてもらえていたらなぁ、と。申し訳ないけど、ちょっと脱力することもあるわけです。こういうコミュニケーションに何か実りはあるのか、と。大切なポイントがずれてきちゃっているような。そんな気分にもなる。

あ、でも、くどいようですが、ぼくはプロじゃない人がレポートを書くなと上から目線で言っているわけじゃないですよ。ぼくもこのブログでブライアン・ウィルソンやらキャロル・キングやら、あれこれコンサートのレポートを載せているけれど、個人的な覚え書きみたいなもので。実際たいしたものが書けているわけでもない。偉そうなこと言う気も、資格もないです。ただ、いろいろな制約にしばられながらコンサート評なりレポートなりを書かなければいけないプロと同じような、窮屈なコンサートの楽しみ方をプロじゃない方までがわざわざする世の中ってどうなんだ、と。ブログという、誰もが手軽に情報発信できる場が編み出されたことで、音楽だけでなく、文化/情報全般の受容形態がねじれだしているんじゃないか、と。こういう新たな状況を受け止めかねているだけです。もちろん、現状に無理なく対応できている柔軟な方々のほうが多そうだし、そういう意味じゃぼくは思い切り古いってことっすね。うーむ、でも違和感あるなぁ。いつからこうなっちゃったんだろう。

今さらだけど、匿名の掲示板なんてのも妙な力を持つ時代だから。ぼくの古くさい価値観のもとではもはやネット上の出来事はまともに判断できない。追いつけない。個人的には、匿名の意見が力を持っちゃいかんと思う。論争にならないでしょ。よほど命にかかわるとか、特別な理由がない限り、匿名で偉そうなことを言っちゃいけない。人間はもともと小ずるい生き物だから。匿名を許しちゃうと、なんでもありになる。まあ、その種の匿名掲示板をあえて見ないようになってから数年になるし。最近の動向はわからないので、この件には深入りしませんが。

叩きだ、炎上だ、と、普通のニュースや新聞でさえもそういう状況を報じる時代。そのきっかけがブログと、そこに匿名で書き込まれたコメントだったりすることも多いみたいで。功罪がとてつもない勢いで交錯している。いろいろな方のブログを気軽に楽しませてもらっている一方で、じゃ、今ネットってのは何をすべきところなのか、何を期待すべきメディアなのか、ちょっと深く考え出すとワケがわかんなくなるというか、やんなっちゃうというか…。そう感じているのも正直なところだけに、なかなか自分のブログも更新しにくいっすね。なんだよ、また更新しないことの言い訳か(笑)。ブログってのがほんと便利なシステムで。気楽に書き込めちゃうもんだから、いったん書き始めると、こんな、ある意味余計なことまで書いちゃうんだな。こんなの、読んでも面白くないっすね、きっと。いや、ほんとすいません。だらだら書いちゃって。もっと頻繁にというか、日常的に更新していれば、たぶんこんなこと書かないんだろうけど。とにかく、個人としてどういうふうにネットに関わっていけばいいのか、最近はよくわかんなくなっちゃった、と。そういうことです。長々と繰り言、ごめんなさい。

でも、やっぱり面白くて役に立つ個人サイトもあるんだよなぁ。特に海外に。まじ資料的にも、心意気的にも、すごく刺激的な個人サイトがいろいろあって。だから、その恩返しの意味もこめて、ぼくもやるからにはもうちょっと人様の役に立ちたいな、と心底思ったりして。何か面白いやり方はないか思案中です。できるはずだと確信してはいるんだけど。具体的には何の結論も出てません(笑)。感覚、古いもんで。楽になるような気がしてブログにしてみたけど、悩みも深まっちゃった。またこのホームページ、手書きタグ入力に戻そうかな。オールドスクール派ってことで(笑)。

なので、最近はやっぱり旧来の対面型のコミュニケーションのほうが、とりあえず落ち着きます。先日100回を迎えたCRT & レココレ@プラスワンとか。あるいは、いわゆるマスコミの中でいちばんパーソナルなやりとりができるラジオとか。その辺をあれこれやり続けているうちに、ネットでの切り口も何か見つかるかなと思ってます。

で、何もCD紹介しないのも、いつもの流儀に反するので(笑)。新譜がぱっとしないので、1月と2月にまたがって全7枚出るケニー・ランキンのオリジナル・アルバム(一部、3月に延びたって噂もあるけど)の中から、ぼくが大好きな75年の『インサイド』、取り上げておきましょうかね。まだ出てませんが。近々出ますので。紙ジャケです。日本独自発売です。うれしいっすね。

ケニー・ランキンの音に出くわしたのは74年。大学生のときだ。出たばかりの『シルヴァー・モーニング』ってアルバムにびっくりして。その前作『ライク・ア・シード』もさっそく購入して。やがて75年、『インサイド』が出たときに本格ノックアウトを食らった、と。時にはジェームス・テイラーのように、時にはマット・デニスのように、時にはジョアン・ジルベルトのように。自作曲のみにこだわらず、いい曲ならばビートルズ・ナンバーだろうとジャズ・スタンダードだろうとラテンだろうと平気で取り上げて、自ら奏でるナイロン弦の生ギターと卓抜した歌心を武器に、独自の洗練された透明な世界観の中へと引きずり込んで提示してみせる彼の魅力にハマった。この人からは本当に多くの音楽性を学んだものだ。

『インサイド』をはじめて聞いたのは、忘れもしない、渋谷のロック喫茶「BYG」の2階で(笑)。お金なかったし、この種の洋楽新譜がかかるラジオもほとんどなかったし。新譜チェックはいつも渋谷のロック喫茶で…という日々だったけど。ある日、「BYG」の2階で寝っ転がってぼんやり音楽に耳を傾けていたら。ケニー・ランキンの声が聞こえてきて。それが『インサイド』のA面だった。おーっ、新譜が出たか、と静かに盛り上がっているうちに。ドゥーワップ・グループ、ハープトーンズも取り上げていた珠玉のスタンダード曲「サンデイ・カインド・オヴ・ラヴ」のメロディが…。これが、来た。ぐっと。むちゃくちゃよかった。イントロのコーラスとハモンド・オルガンだけで鳥肌もの。続く、ケニー・ランキンの歌声もごきげん。あわてて1階へと駆け下りて、アルバム・ジャケットを確認。その足で原宿のメロディハウスへと突入した記憶がある。

そういえば、初めてブライアン・ウィルソンにインタビューをするためにロサンゼルスへ行ったとき。インタビューをした日の夜、とあるクラブでケニー・ランキンのライヴを見たっけ。ブラジリアン・フュージョン色濃いパフォーマンスだったけれど。リラックスした雰囲気の中、相変わらず柔軟な音楽性をひょうひょうと発揮していて。楽しかった。なんだかんだ言ってブライアンへのインタビューに向けてかなり緊張しまくりだったぼくの気分をすーっと癒してくれたものだ。その節はありがとうございました(笑)。

Toolin' Around Woodstock / Arlen Roth (Aquinnah Records)2008/02/10

Toolin' Around Woodstock / Arlen Roth

近ごろないくらいに奇跡の短期間更新ですが。

実は今日、元ボーダーラインのジョン・ガーシェンからごきげんなアルバムが送られてきたもんで。いや、ごきげんといっても、かなり渋いというか。地味だけど。でも、ごきげん。ルーツ・ロック系ウルテク・ギタリスト、アーレン・ロスの新作アルバム『トゥーリン・アラウンド・ウッドストック』だ。ほっとくと認識もされずに終わっちゃうかもしれない1枚なもんで。これはぜひ紹介しておきたいな、と。更新しちゃいます。ブログとか、今どうなんすかね…みたいなエントリーを書いた直後のくせして、何か盛り上がったものに出くわすと気分が一気に変わっちゃう私です(笑)。お調子者です。すんません。これを機会にマメな更新ペースに戻れたらいいんだけど。まあ、その辺は成り行きで、ね。

05年の暮れに出た前作『ランドスケイプ』同様、アーレン・ロスとジョン・ガーシェンが共同プロデュース。オリジナルは2曲のみで他はすべてカヴァーだが、ロックンロールあり、R&Bあり、カントリーあり、フォーク・ブルースあり、ポピュラー・スタンダードあり…と、なかなか楽しい選曲になっている。今回の目玉はなんといってもレヴォン・ヘルムの参加だろう。大半の曲でレヴォンがドラムを担当。チャック・ベリーの「スウィート・リトル・シックスティーン」とバック・オーウェンスの「クライン・タイム」ではリード・ヴォーカルもとっている。だいぶ枯れちゃったけれど、独特の粘っこい節回しは健在。今回のグラミーにもノミネートされたソロ・アルバム『ダート・ファーマー』に引き続き、ファンにとっては本当にうれしいプレゼントだ。ウッドストックにあるレヴォンのスタジオでのレコーディングです。

さらに、テレキャスター・ファンにはたまらない、かつニック・ロウ・ファンにもたまらない、ご存じビル・カーチェンも参加して、ギターはもちろん、ヴォーカルも披露していたり。アーレン、レヴォンそれぞれの娘さんがコーラスしていたり。アーレン本人が歌っていたり…。

アーレン・ロスはその昔、ラウンダー・レコードから出ていた『ホット・ピックアップス』と『ギタリスト』ってアルバムが素晴らしくて。ずいぶんと聞きまくったものだ。まあ、この人の場合、ミュージシャンズ・ミュージシャン的な側面が強くて。ギタリストの間で異常に注目を集めていた人。教則本も出していて。ストリング・ベンダーなど装置に頼ることなく、指のテクニックだけでペダル・スティール・ギターのような演奏をしてしまう独自の奏法が当時日本でも大いに話題になった。1本の弦の音をそのまま伸ばしている間に他の2本をいっぺんにチョーキング・ダウンするとか、2本の弦で和音を出したままもう1本をチョーキング・アップするとか、そういうのをものすごいスピードでやってのけるワザで。ジミ・ヘン以上の衝撃というか。ぼくが彼のアルバムを聞きまくっていたのも、半ば練習のためだったりしたのだが。

そんなわけで、ついついテクニック面ばかりに耳が行ってしまいがちなところもあるのだけれど。アーレン・ロスのすごいところは、テクニックだけでなく、ギターを見事に歌わせる“歌心”もきっちり伴っている点。本人の実際のヴォーカルは確かにちょっと弱いものの、問題なし。そのぶんギターが歌うから。今回のアルバムで言えばボブ・ディランの「バラッド・オヴ・ア・シン・マン」とか。インストながら、もう歌ってます。歌詞が聞こえる。親友、故ダニー・ガットンに捧げられた「アンチェインド・メロディ」も泣ける。ここでも凄まじい歌心を発揮。もともとインストの「スリープウォーク」ですら歌詞が聞こえてくるような…(笑)。この「スリープウォーク」は、ご存じの通り、サント&ジョニーというスティール・ギター&ギターのデュオの古いヒット曲だけど。スティール以上にスティールらしいアーレンのギターが素晴らしい。

サニー・テリー&ブラウニー・マギーの「バーント・チャイルド」とか、アコースティック・ギター系の楽曲もぐっと来る。年齢を重ねて、ぐっと抑えた表現にも味わいが出てきた感じ。アーレンとレヴォンの娘さんたちがリード・ヴォーカルをとっているドリス・トロイのヒットR&B「ジャスト・ワン・ルック」のカヴァーでは、ぐっとアーシーなアレンジがほどこされていて、これまた楽しい。さらに2曲ほど、ソニー・ランドレスとの爆裂スライド・ギター・バトルも展開していて。燃えます。

ちなみに、このニュー・アルバム、なんとDVD付きで。この豪華メンバーのレコーディング風景をたっぷり楽しめるのだ。すごい。アーレンとソニーのスライド・バトルの様子も映像で存分に味わえる。ストラトじゃなく、テレキャスターで軽々とボリューム奏法ぶちかますアーレンのお姿とか、かっこいい。ビル・カーチェンも渋い。テレキャスターのブリッジのほんとに端っこのほうをピッキングする例のスタイルが、いやー、男だね。レヴォンのドラム演奏ぶりもたっぷり。炎の演奏指導もあるし(笑)。先日、映画『ザ・シューター』に出演していたレヴォンを見て、おいおい、こんなんなっちゃったの? とぶっとんだものだけれど、いやいや、まだ元気っすね。うれしい。

そろそろ輸入盤屋さんには並んでいるのかも。国内配給盤も今月下旬にMSIから出るみたいです。

で、前回のエントリーから告知部分だけこっちに移動させてもらいますね。以下、移動した分です。

CRTは2月20日、鈴木慶一ナイトです。慶一さんは『ベースメント・テープス』を取り上げた回とか、エルヴィス・プレスリー・ナイトとか、『SMiLE』ナイトとかにゲストとして出てくださったCRT仲間ですが。今回は、ご本人が主役。左の告知欄を参照して、ぜひロフトプロスワンに足をお運びください。楽しみ楽しみ。

あと、CRTのちょっと前に、こういうイベントにも出演します。『<音楽CD検定>ロック&ポップス~萩原健太の模擬試験』ってタイトルだそうです(笑)。検定ブームの昨今、そういうのってどうなのよ…と、いぶかる方も多いと思いますが。洋楽に対する基礎学力を確認したり、それにまつわる話をしたりってのは、案外楽しいっすよね。こちらもこぞって、ひとつ!

それと、これがいちばん近いんですが。明日、2月11日、グラミー賞の生中継ってWOWOWでおなじみだけど。なんとmusicbirdでもやるんすね。もちろん、音だけだけど。その生中継番組の進行も担当します。聞ける環境がある方は、ぜひ。