Berlin: Live at St. Ann's Warehouse / Lou Reed (Matador)2008/12/02

Berlin: Live at St. Ann's Warehouse / Lou Reed

輸入盤はちょっと前に出ていて。国内盤は来年早々のリリース。紹介のタイミングがちょっと間抜けになっちゃいましたが。最近よく聞いているので、今日はこいつを。ニューヨークに行ってきたせいすかね。お調子者ですいません(笑)。

ルー・リードが73年にリリースしたものの、セールス的に大失敗に終わり、以降演奏を封印していた伝説のアルバム『ベルリン』を2006年にステージで完全再現したときの記録。日本でも映画公開された、あれですが。映画の公開、DVDリリースに合わせて、ライヴCDも出ました。ブライアン・ウィルソンの『ペット・サウンズ・ライヴ』とか、なんとコンサートという場で初めて全体像を披露することになった『SMiLE』とか、ゾンビーズの『オデッセイ&オラクル』再現ライヴとか、この種の試みは近年やけに多いわけだけれど。

改めてずいぶんと多くのことを発見させてもらったという意味では『SMiLE』に近いかも。73年のオリジナル・アルバムで展開していた宿命の物語がより立体的に甦っていて。その底力を、改めて、というより、むしろ初めて思い知らされた気がする。ブライアンの『SMiLE』がシーンに受け入れられるるまで37年という歳月を必要としたように、『ベルリン』もまた33年という歳月が必要だったということか。完全“再現”とはいえ、音圧やアタック感は完全に今のものなわけで。このライヴ盤での音像こそが初めて世に現出した『ベルリン』の完成型なんじゃないかとさえ思える。

30年前はこっちの素養も心許なくて。何にもわかっちゃいなかったんだなぁ、と。またまた思い知らされました。何も知らないくせに、わかったような気分になって、いいの悪いの自分の中で勝手に決めつけちゃいけないっすね。若さの暴走は無知の暴走と裏表。このライヴ盤を聞いてからオリジナル・アルバムに立ち返ってみると、一音一音にこめられていた意味のようなものが、別の表情をたたえながら匂い立ってくるようで。くらくらする。

Sugar Mountain: Live at Canterbury House 1968 / Neil Young (Reprise)2008/12/03

Sugar Mountain: Live at Canterbury House 1968 / Neil Young

『ライヴ・アット・ザ・フィルモア・イースト』『ライヴ・アット・マッセイ・ホール 1971』に続く、ニール・ヤングの“アーカイヴズ・パフォーマンス・シリーズ”第3弾。またまた時代をさかのぼって、バッファロー・スプリングフィールド脱退半年後の1968年、23歳になる直前のニール・ヤングのみずみずしい歌声が堪能できる発掘お宝ライヴ音源の登場だ。

初期シングルのB面に収められて世に出たアルバム未収録曲「シュガー・マウンテン」が収録されたことでおなじみ、ミシガン州アン・アーバーのカンタベリー・ハウスで行われた伝説のアコギ弾き語りコンサート。まだソロ楽曲が少ない段階ってことで、「オン・ザ・ウェイ・ホーム」「ミスター・ソウル」「エクスペクティング・トゥ・フライ」「アウト・オヴ・マイ・マインド」「ナウアデイズ・クレンシー・キャント・イーヴン・シング」「ブロークン・アロウ」などバッファロー・スプリングフィールド時代のレパートリーのほうがファースト・ソロ・アルバムからの曲よりも多いセットリストになっているのだけれど、これがいい。バッファロー時代の楽曲をシンガー・ソングライターとして改めて表現し直しているような感じで。新鮮です。

かと思えば、2年後に出ることになる『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』収録の「バーズ」を早くも歌っていたり。「ウィンターロング」もちらっとやってたり。「クラシカル・ガス」を軽く弾いてみせたり。興味深い選曲です。今からは想像もできないほどフレンドリーなMCもたっぷり入っていて、あれこれ面白いエピソードが聞けるのもうれしい。けっこう笑いとってます。

アコギ弾き語りライヴってことでは『…マッセイ・ホール1971』と同趣向ではあるのだけれど。『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』と『ハーヴェスト』という2枚の大傑作アルバムに挟まれた時期に録音されたマッセイ・ホールでの自信に満ちたパフォーマンスとはまるで違う、青く繊細なニール・ヤングが楽しめる。いつものようにCDは高音質音源を収めたDVD付きの仕様。iTunes版は音のみだけど、「アイ・アム・ア・チャイルド」がボーナスで入ってます。

来年早々リリースされるという初期音源によるブルーレイ・ボックス・セットはどんなことになるんだろう…。

24 Hours / Tom Jones (S-Curve)2008/12/04

24 Hours / Tom Jones

1970年だったかな。ぼくが中学生だったころ、確か12チャンネルでやっていた『トム・ジョーンズ・ショー』が大好きで。毎週楽しみにしていた。番組の公式ファン・クラブみたいなやつもあって。入ってました(笑)。入ると、毎月オンエア予定の内容を記したパンフレットみたいなのがもらえて。多彩なゲストを事前にチェックできた。ホーム・ビデオなんか夢のまた夢みたいな時代だったから。毎回、音だけぼろっちいカセットに録音して楽しんでいたっけ。

ほんと、ゲストがすごかった。ジャニス・ジョプリン、メアリー・ホプキン、ムーディ・ブルース、ジョー・コッカー、ザ・フー、リトル・リチャード、CCR、スティーヴィ・ワンダー、アレサ・フランクリン、ジョニー・キャッシュ、サミー・デイヴィス・ジュニア、シャルル・アズナブールなどなど。ビデオ・クリップなんかなくて、洋楽雑誌のグラビアを眺めてはその静止画を脳内でぐわ~っと動かす…みたいなことをがんばってやっていたあの時代に、ずいぶんといろんなアーティストの動くお姿を見せてもらった。

もちろんゲストばかりでなく。トム・ジョーンズのすごさは毎回思い知ったものだ。ジャニスとのデュエットとか、アレサとのデュエットとか、今でも忘れられない。サム&デイヴのサム・ムーアが「今もっともファンキーな歌手はトム・ジョーンズだ」と語ったというエピソードが、そのファン・クラブの会報に載ってたのを覚えてるけど。納得です。この人、持ち前のダイナマイトな歌声でR&Bも、カントリーも、ロックンロールも、バカラック・ナンバーも、ミュージカル曲も、ジャズ・スタンダードも、何でもかんでも歌いまくるから。おかげで聞く側であるぼくもずいぶんと幅広い楽曲に接することができた。リスナーとして育ててもらいました。恩人です。

さて、そんなミスター・ダイナマイトの新作。80年代末以降、また復活してイギリスの若いミュージシャンたちとの交流の中で活発な活動をするようになったけれど。今回も、リリー・アレンでいい仕事を聞かせたフューチャー・カットをプロデューサーに迎えて、適度なハイパー感とオーガニック感が交錯するサウンドをバックに、衰えを知らぬ爆発的なノドを聞かせまくる。ブルース・スプリングスティーンの近作をスタックス調のR&Bバラード・アレンジでドラマチックにカヴァーした「ザ・ヒッター」とか、ボノとエッジがゲスト参加したファンキーな「シュガー・ダディ」あたりに注目が集まっているようだけど、往年の「よくあることさ」的な軽い洗練を取り込んだ「イフ・ヒー・シュッド・エヴァー・リーヴ・ユー」とか「ウィ・ガット・ラヴ」あたりが特にお気に入り。

今でも年間200本以上ライヴやってるんだって。すげえなぁ。

White Chocolate / Al Kooper (Sony)2008/12/05

White Chocolate / Al Kooper

そういえば、ニューヨーク行きのごたごたで、これ紹介し忘れてました。『ストリーム』では発売日前後にかけさせてもらったんだけど。アル・クーパー、3年ぶりの新作。前作が『ブラック・コーヒー』で、今作が『ホワイト・チョコレート』。自分なりのブルー・アイド・ソウル感覚を表現したタイトルなんだろうな、と。

スティーヴ・クロッパー、ダック・ダン、アップタウン・ホーンズらがバックアップ。ジェリー・ゴフィンとの共作曲も2曲。ボブ・ディランの「悲しみは果てしなく」やオーティス・レディングの「アイ・ラヴ・ユー・モア・ザン・ワーズ・キャン・セイ」、映画『バグダッド・カフェ』の「コーリング・ユー」などのアイデア豊かなカヴァーもあり。さらにスタックスR&Bに対する敬意と愛情をストレートに炸裂させた「スタックサビリティ」なんて曲もあって。盛り上がる。

この人の最大の弱点であるヴォーカルの弱さは今回も相変わらずだけれど。これで40年やってきたわけで。文句なし。ここまできたら、ぼくごときが何をどうこう言おうが、間違いなく“味”です。モーズ・アリソンの境地っすね。

以前インタビューした際、「俺が死んだら、こういう音楽はなくなるんだ。継承なんかされない」とシニカルに語っていた。確かに。どんどん音楽が細分化されて、個人的になってきている今、これだけ雄大な幅をたたえたアル・クーパーの音楽性全体を正統に継承することなど不可能なのかも。大事に聞きましょう。来春にはまた来日するみたいだし。

本国アメリカではインディーズでのリリース。アル・クーパーのWEBサイトではデモ・トラック7曲付きの盤も売ってます。ぼくもそれ買いました。まだ届いてませんが(笑)。

Bring Me Your Love (Special Limited Edition) / City And Colour (Dine Alone/Vagrant)2008/12/06

Bring Me Your Love (Special Limited Edition) / City And Colour

アレクシスオンファイアのダラス・グリーンのソロ・プロジェクト、シティ・アンド・カラーのセカンド・スタジオ・アルバムが2枚組デラックス・エディションになって再登場。オリジナル・フォーマットでのリリースは今年の2月だったか3月だったか。1年足らずでエクスパンデッド化されちゃったわけだ。前のを買った身としては、なんだか損した気分にもなるが。いやいや、このデラックス・エディション、素晴らしい仕上がりなもんで。仕方ない。許します。

オリジナル収録曲12曲にボーナス・トラック2曲を追加したものがディスク1。ボーナス含めた14曲すべてのデモ・ヴァージョンをオリジナル盤通りの曲順で収めたものがディスク2。デモ音源はすべて自宅、あるいはツアー先でレコーディングされていて。曲によってはディア&ディパーテッドのメンバーとかも参加しているけれど、基本的にはダラスくんひとりで作業したもののようだ。

もともとこの『ブリング・ミー・ユア・ラヴ』は、バンドのときとは一転、アコースティックなサウンドを基調に、はかなくメランコリックな歌心を聞かせる佳盤だったけれど。シンプルなデモ・ヴァージョン群では、さらに内省的な魅力が増幅されている。どの曲も、それほど大きくイメージが変わるわけではないものの、ラフに、粗くレコーディングされたデモ音源が持つ奇妙な魔力のようなものが存分に堪能できて。泣ける。

デモのほうが胸にぐっとくる曲もちらほら…(笑)。前の買っちゃった方、買い直しっすね。全世界6000セット限定だそうです。