Revolutions In Sound: Warner Bros. Records, The First 50 Years / Various Artists (Warner Bros.)2009/01/11

Revolutions In Sound: Warner Bros. Records, The First 50 Years

年を越してから、ようやく初の更新です。

休み中はそこそこ時間がとれたので、たまっていたボックス・セット群をあれこれ聞いて過ごしてましたが。今回、いちばん楽しく聞いたのが、これ。1958年に設立されたワーナー・ブラザーズ・レコードの50年の歴史を総括した箱。CD版は10枚組。LPサイズの豪華ブックレット付きで、全199曲入り。エクスパンデッド版というのも出ていて。こちらは単独でも売られているウォーレン・ゼインズ著の分厚い同名書籍に、全320曲の圧縮音源ファイル入りのUSBメモリが付属したもの。写真はそのエクスパンデッド版のほうだ。

USBメモリがワーナー・ブラザーズのロゴ型で、かわいい。圧縮フォーマットは320kb/s、ステレオ形式のmp3。とりあえずmp3の最高音質でエンコードされている。一部、タグに不備があるけれど、まあ、その辺は目をつぶりましょう。独自のジュークボックス・ソフトや、クレジットを記したpdfファイルも付属している。余裕があれば選曲的にも断然エクスパンデッド版のほうがいいような気がするけれど。データが消失しちゃう危険性もあるので。心配性の方は、曲数は少ないけどCD版のほうがよろしいか、と。ぼくは両方買っちゃいました。またやっちゃいました(笑)。

傘下レーベルの音源も含め、タブ・ハンター、エヴァリー、コニー・スティーヴンス、アラン・シャーマンといったレーベル初期のものから、アソシエーション、ボー・ブラメルズ、ビーチ・ボーイズ、ヴァン・ダイク・パークス、ランディ・ニューマン、ジェームス・テイラー、ニール・ヤング、リトル・フィートらバーバンク・サウンド期のアーティスト群を経て、マドンナ、ジョージ・ハリスン、ロジャー、デジタル・アンダーグラウンド、R.E.M.、アラニス・モリセット、フレイミング・リップス、ホワイト・ストライプスまで。これは楽しい。

アメリカのポップ音楽シーンは、大ざっぱに言うと1975年あたりを境に変質してしまっていて。それまではかなり趣味性の高い、マニアックな音楽もリリースしながら、ある種文化事業的な役割も果たしていたレコード会社が、ロックのビッグ・ビジネス化にともなって売り上げ優先路線へとシフトチェンジ。売れそうにないミュージシャンはどんどんクビになっていった。そんな中、ワーナーはモー・オースティンとかレニー・ワロンカーとかテッド・テンプルマンとか、気概のある経営者/スタッフがふんばったので、まあ、70年代いっぱいくらいまで良質なレーベル・カラーを維持していた。今回のボックス・セットを聞くと、その辺のふんばり具合がよくわかって。面白い。

映像系の老舗企業が始めたレーベルだけに、発足当初は映画/テレビ界のスターに歌わせたり、他レーベルですでにスターダムをつかんでいたアーティストを移籍させたり、そんな感じでがんばって、やがて60年代半ばからは有能なスタッフのがんばりで独自のバーバンク・サウンドを確立して、やがて80年代以降は多くのレーベルを統合しながら鉄壁の総合レーベルとして君臨して…。そんなワーナーの歩みを一気に振り返ることができる。

Hommage a Nesuhi: Atlantic Jazz, A 60th Anniversary Collection / Various Artists (Rhino Handmade)2009/01/12

Hommage a Nesuhi

ぼくが大学生だったころだから、70年代半ば。レイ・チャールズの『ザ・ベスト・オヴ・レイ・チャールズ』ってアルバムを買った。まだぼくのレイ・チャールズ体験も浅いころで。他にもいくつかレイ・チャールズのベストを買ったりしながら、浅瀬でちゃぽちゃぽ探りを入れていた時期だった。1枚はアトランティック、もう1枚はABCの音源で構成された2枚組ベストLPとか、よく聞いていたっけ。で、そんな流れで出会ったのが『ザ・ベスト・オヴ・レイ・チャールズ』。70年にリリースされた50年代アトランティック音源によるベスト盤だ。当然歌ものだろうと思って購入し、家に帰って聞いてみたら、これがなんとインスト・アルバムで。正直、かなりびっくりした。いや、びっくりといっても、がっかり方面にびっくりしたわけじゃなくて。むしろ大いに興奮してびっくりしたのだけれど。

そこで聞かれたのは、ジャズだった。デイヴィッド・ファットヘッド・ニューマンのタンギングの強そうなサックスをフィーチャーした「ハード・タイムズ」とか、ファンキー・ジャズの名曲「ドゥードリン」とか、R&B感覚が炸裂する「ロックハウス」とか、ゴスペル色が溢れる「スウィート・シックスティーン・バーズ」とか。まじ、かっこよかった。目から鱗、だった。高校生時代からあれこれジャズを聞くようになって。ジャズ喫茶とかにも出入りしながら、とりあえず一通り、名盤と呼ばれる作品には接してきたものだが。『ザ・ベスト・オヴ・レイ・チャールズ』を聞いて感じたのは、とうとうぼくは理想のジャズに出会えた、と。そういう興奮だった。

ファンキーで、ブルージーで、ソウルフルで、ゴスペルライクで、キャッチーで。当時、ジャズの名盤としてレイ・チャールズのアルバムが語られることはほとんどなかったけれど、いやー、とんでもない。以降、そのころのぼくの大のお気に入りだったホレス・シルヴァーやキャノンボール・アダレイ、ボビー・ティモンズ、ドナルド・バードらとともに、レイ・チャールズもぼくの中で大好きな“ジャズ・アーティスト”の仲間入りをした。ベスト盤にピックアップされていた楽曲のオリジナル収録アルバムを少しずつ揃え始めて。ソウル・シンガーだけでは終わらない、レイ・チャールズの奥深い世界へとずぶずぶハマりこんでいったわけだが。

大ざっぱに言えば、そんなレイ・チャールズのジャズ作品群が体現している感触こそが、アトランティック・ジャズ全体を太く貫く魅力だとぼくは思う。だから、たとえばジョン・コルトレーンにしても、プレスティッジやインパルスの諸作とアトランティックの作品群とを比べると、どこかアトランティック盤のほうが“太い”感じがあって。まあ、ぼくの単なる思い込みかもしれないけど(笑)、なんかそんな気がするのだ。チャールズ・ミンガスにしてもそう。ローランド・カークにしてもそう。

てことで、そんなアトランティック・ジャズのごきげんな魅力をダイジェストで堪能できるのが本ボックス・セット。米ライノ・ハンドメイドが全世界限定3000セットという形でリリースした5枚組だ。1955年から76年まで、アトランティックに残されたジャズの名演から選りすぐられた61曲。アルバム・タイトルに冠された“ネスヒ”というのは、アトランティックのジャズ部門の創設者/プロデューサー、ネスヒ・アーティガンのことだ。編纂を手がけたのは自らもプロデューサーとして本ボックスの収録曲の制作に絡んだりもしているジョエル・ドーンだが、ドーンもこの仕事を最後に他界してしまった。というわけで、本ボックスはネスヒとジョエルに捧げられている。

年代順というわけではなく、5枚のディスクそれぞれにテーマが設定され、周到な曲順でアトランティック・ジャズの黄金期を追体験させてくれる仕上がり。10インチ四方、という箱の大きさもぐっとくる。リー・フリードランダーによるジャズ・ミュージシャンのポートレイト集もおまけで付いている。レイ・チャールズ、デイヴィッド・ファットヘッド・ニューマン、ハンク・クロフォード、ミルト・ジャクソン、ローランド・カーク、エディ・ハリス、ハービー・マン、レス・マッキャン、ユーゼフ・ラティーフ、ヒューバート・ローズ、レイ・ブライアント、モーズ・アリソン、オスカー・ブラウン・ジュニア、キング・カーティス、ラヴァーン・ベイカー、チャールズ・ロイド、マックス・ローチ、オーネット・コールマン、ジョン・コルトレーン、チャールズ・ミンガスなどなど、狭いジャズのジャンルにとらわれない収録アーティストの顔ぶれを眺めているだけでわくわくものだ。歌ものもそこそこ入ってます。

マニアの心をくすぐる通し番号入り。ぼくのは3000分の2597番。わりとぎりぎりの番号っすね。限定なので、興味のある方はお早めに。

Art of Field Recording, Volume II: 50 Years of Traditional American Music Documented by Art Rosenbaum / Various Artists (Dust-to-Digital)2009/01/15

Art of Field Recording, Volume II: 50 Years of Traditional American Music Documented by Art Rosenbaum

今日も立て続けに、去年暮れに出たボックス・セットを紹介します。

画家/イラストレーターで、熱心なアメリカーナ音楽の収集家でもあるアート・ローゼンバウム。今、70歳くらいだと思うけれど。彼が奥様マーゴとともに、1957~2007年、実に50年の歳月をかけてフィールド・レコーディングした音源を集大成するボックス・セット第2弾。06年の秋ごろリリースされた第1弾同様、今回も4枚組だ。夫妻による写真やイラスト、解説を満載した96ページの豪華ブックレット付き。4枚のディスクをそれぞれ収めた内ジャケットも1枚ずつ別イラストの紙ジャケ仕様で。味わい深い。

民家で、あるいは教会で、など、まさに生活の場で録音されたブルース、スピリチュアル、セイクレッド・ソング、パーラー・チューン、チェイン・ギャング・ソング、労働歌、カントリー・バラッドなどの雨アラレ。ローゼンバウム氏は、こうした音楽こそがもっとも輝かしいアメリカ文化であるという信念を持っているそうで。その情熱と見識には、まじ頭が下がる。スタジオで録音されレコード化された音楽だけが音楽じゃない、本当に人々の歌と呼べる音楽は生活の中にこそある、と。そんな事実を思い知らされる素晴らしいアンソロジーだ。

ハリー・スミスのご存じ『アンソロジー・オブ・アメリカン・フォーク・ミュージック』と同じアプローチなので、あれに心震わせた方になら絶対おすすめの箱。楽器をともなったパフォーマンスもあれば、ヴォーカルのみのものもある。今回のディスク4はまるまる歌声のみで。うわっ…とか最初は思ったものの、これが深いっすね。楽器をともなったものの中では、スティール・ギター入りのゴスペル・クワイアものとか、けっこう面白かった。いやー、まだまだ知らない世界は多いなぁ。道は遠い…。

Already Free / The Derek Trucks Band (Victor/Sony BMG)2009/01/16

Already Free / The Derek Trucks Band

3年ぶりの新作です。ライヴも含めて7作目。すげえいいです、今回も。

のっけ、ボブ・ディランの「ダウン・イン・ザ・フラッド」をお得意のアーシーなスライド・ギターをフィーチャーしながらブルージーに再構築。クラヴィネット、ウィーリッツァ、ハモンドなどを駆使するコーフィ・バーブリッジのキーボードがいい味を出している。ミステリアスなホーン・アンサンブルもいい。続くポール・ペナのカヴァー「サムシング・トゥ・メイク・ユー・ハッピー」のホットさとクールさをあわせもつグルーヴもごきげん。

他にもカヴァー曲としては、マイク・マティソンとデレクの奥様スーザン・テデスキのデュエットで展開するダン・ペン&スプーナー・オールダム作の名曲「スウィート・インスピレーション」もよかった。メンフィス風味がたまらない。デラニー&ボニーふうの節回しも聞かれる。デレクのソロもファンキーだ。そして、ビッグ・メイベルの「アイ・ノウ」のカヴァー。これもかっこいい。インドふうの音階を取り込みつつの展開に、強引ながら往年のマイク・ブルームフィールドの姿を二重写しにしてしまった。

オリジナル曲でも、南部っぽいミディアム・グルーヴにのって、やはりエリック・クラプトン人脈のひとりでもあるドイル・ブラムホール二世のヴォーカルが聞かれる「メイビー・ジス・タイム」とか、古き良きロードハウス・ロック風味あふれる「ゲット・ホワット・ユー・ディザーヴ」とか、スーザン・テデスキの切々たる歌声が印象的なアコースティック曲「バック・ホエア・アイ・スターテッド」とか、いい曲ぞろい。軽くソウル味がまぶされた爽快な三連ミディアム「デイズ・イズ・オールモスト・ゴーン」ってのも、ちょっと他の曲とは趣が違うけれど、たぶん古株アメリカン・ロック・ファンにはたまらない1曲なはず。デレクのギター・ソロも泣ける。

デレクはご存じの通り、オールマン・ブラザーズ・バンドのドラマー、ブッチ・トラックスの甥だけど。今回、4曲ほど共同プロデュースを手がけているドイル・ブラムホール二世も白人気鋭ブルースマン、先代ブラムホール(笑)の息子。二人とも新世代ってこともあり、ブルースやロックだけにとどまらない幅広いジャンルからの影響をたたえたギタリストで。伝統にばかり縛られることなく、それぞれのハイパーなセンスもそれなりに発揮しながら、のびのびと新時代のブルース・ロックを構築している感じ。いいっすね。

Waking Up Is Hard To Do / Neil Sedaka (Razor & Tie)2009/01/20

Waking Up Is Hard To Do / Neil Sedaka

去年暮れにリリースされたクリスマス・アルバムに続くニール・セダカの新作は、なんと子供向けの1枚。基本的には全曲、おなじみのセダカ・メロディの替え歌集だ。くっだらないっちゃくっだらないのだけれど、すこぶる楽しいアルバムです。

「悲しき慕情 (Breaking Up Is Hard To Do)」が「Waking Up Is Hard To Do」という、要するに、朝起きるのがどんなにつらいかって歌になっていたり。コニー・フランシスに提供した「ボーイハント (Where The Boys Are)」が「Where The Toys Are」という、おもちゃを探す歌になっていたり。「愛ある限り (Love Will Keep Us Together)」が「Lunch Will Keep Us Together」という、お友達とお弁当を食べるときの歌になっていたり。「すてきな16歳 (Happy Birthday Sweet Sixteen)」が「Happy Birthday Number Three」という、3歳の誕生日をお祝いする歌になっていたり。「恋のアマリロ (Is This The Way To Amarillo)」が「Is This The Way To Cross The Street」という、道を横断する大冒険の歌に変わっていたり。

「雨に微笑みを (Laughter In The Rain)」とか、「悲しき悪魔 (Little Devil)」とか、「アイ・ゴー・エイプ」とか、そのままのタイトルで子供向けにもいけそうなやつは歌詞だけ変えられている。タイトルががらっと変わっているものとしては、「カレンダー・ガール」を下敷きにした「Dinosaur Pet」とか、「オー・キャロル」を下敷きにした「Rubber Duckie」とか。どれもこれもハッピーな仕上がり。小さいお子さんがいらっしゃるオールディーズ・ファンの方とかには絶好の1枚かも。ニール・セダカもお孫さんのシャーロットちゃんとアマンダちゃんをお菓子で釣ってバック・コーラスをさせながら、うきうきパフォームしてます。

ブックレットは各曲の内容に即した塗り絵になってます。親子で塗っちゃってください。