Roll On / J.J. Cale (Rounder)2009/03/08

Roll On / J.J. Cale

2月の末からどかどかっと特番ラッシュ。まあ、忙しいことはありがたいことなので。がんばってます。ありがとうございます。去年の夏からはiPhoneをずっと使っていたんだけど、先月それに加えてBlackBerry Boldも入手。それいじくってるのも楽しくてねー(笑)。と、そうこうしているうちに、ひょんなことから背中を傷めちゃったりもして。慌ただしいったらありゃしない。なかなか更新できませんでした。申し訳ない。

あ、そうそう。間もなく、こんな本も出します。わが妻も紹介してくれてます。ありがたや。新書ってこともあって、深く突っ込まず、軽いよもやま話って感じで書かせてもらいましたが。おひまがあったらチェックしてみてください。70年代に青春を送った人向けかも(笑)。

というわけで、本日のピックアップ盤も70年代に青春を送った人向けのセレクション。J.J.ケイル、いきます。エリック・クラプトンとの連名で06年にリリースされた『ザ・ロード・トゥ・エスコンディード』以来2年半ぶり、単独名義だと04年の『トゥ・タルサ・アンド・バック』以来5年ぶりの新作です。

クラプトンとの連名でのリリースに加えて、ジョン・メイヤー、デレク・トラックス、アルバート・リー、タジ・マハール、ビリー・プレストンなど、豪華な参加メンバーも話題になった『ザ・ロード・トゥ…』とは打って変わって、今回、参加ミュージシャンは地味。全12曲中8曲では、ギターはもちろん、ドラムもベースもエレクトリック・ピアノもバンジョーもマンドリンもJ.J.ケイルひとりによって多重録音されている。

残り4曲がバンド編成での録音。こちらには古くからの仲間、ジム・カーステイン、ビル・ラフェンスピーガーらに加えて、『トゥ・タルサ…』の参加ミュージシャンがずらり顔を並べている。そのときのアウトテイクなのかも。1曲にはエリック・クラプトンも参加しているので、これは『ザ・ロード・トゥ…』のアウトテイクかな?

とはいえ、バックトラックがどうあろうと、J.J.ケイルの味は変わらない。どの曲も、レイジーで、ブルージーで、ジャジーで、スワンプっぽくて、アーシーで、と同時に、なぜかハイパーで、コズミックで…。かっこいい。一瞬たりと激することなく、淡々と、不変の持ち味を放ち続けるケイルのたたずまいは、まじワン・アンド・オンリーだ。クラプトンが惚れるのも無理はない。

70年代にデビューして以来ずっとじじいっぽい音楽を聞かせてきたJ.J.ケイル。本当のじじいになって、ますます持ち味に磨きがかかってきたって感じ。

Yakety Yak / The Leiber-Stoller Big Band (Collectors' Choice)2009/03/14

Yakety Yak / The Leiber-Stoller Big Band

前回のエントリーで触れさせてもらったぼくの新刊なんですが。『ロック・ギタリスト伝説』ってタイトルで。あー、やっぱ健太さん、“伝説”好きですねー…と何度か言われましたよ。ぼくが初めて書いた本のタイトルが『はっぴいえんど伝説』だったからなんだけど。いやいや、偶然ですから(笑)。今回のタイトルはアスキー新書の方が付けてくれました。ぼくはノー・タッチです。

まあ、ぼくが本を書く際に取り上げる話題が古いものばかりなので、伝説って単語が使いやすいのかも。古い人間なんです。すみません。

というわけで、今回のピックアップ・アルバムですが。やっぱり古いとこ、いきます。ビッグ・バンド・ジャズというか。いや、R&Bというか。ポップ・インストというか。以前、ここでも書いたレイ・チャールズのジャズ・アルバムにも通じるような1枚。1960年にアトランティックからリリースされたザ・リーバー=ストーラー・ビッグ・バンド唯一のアルバムです。

つーか、これはもちろんパーマネントな楽団ではなくて。アーティスト名からもわかる通り、史上初のブルー・アイド・ソウル・ブラザーズとも呼ばれる偉大な白人ソングライター/プロデューサー・ユニット、ジェリー・リーバー&マイク・ストーラーの作品を、臨時招集されたジャズメンによって構成されたビッグ・バンドでジャズ風味にアレンジしつつ聞かせた盤だ。自らも数々のレコーディングに参加しているリーバー&ストーラーながら、ここでは演奏には参加せず。スーパーヴァイザーとしてのみクレジットされている。

集ったミュージシャン陣は、フランク・フォスター、ソニー・ペイン、アル・グレイ、サド・ジョーンズ、レッド・ミッチェル、ハンク・ジョーンズ、エリス・ラーキン、ケニー・バレル、アーニー・ロイヤル、ベニー・パウエルなど。カウント・ベイシー・オーケストラ系の人脈を中心に、名手が勢揃いだ。エンジニアはフィル・ラモーン。オリジナル・ライナーノーツはナット・ヘントフだ。

こういう布陣で、「ヤケティ・ヤック」「ポイズン・アイヴィ」「スモーキー・ジョーズ・カフェ」「チャーリー・ブラウン」といったコースターズへの提供曲や、「ラヴィング・ユー」「ジェイルハウス・ロック」「ドント」「ハウンド・ドッグ」などエルヴィス・プレスリーでおなじみの楽曲、「ブラック・デニム・トラウザーズ・アンド・モーターサイクル・ブーツ」「バズーム」などチアーズへの提供曲、そしてウィルバート・ハリスンの、というよりビートルズも歌っているR&Bスタンダードとしておなじみ「カンサス・シティ」の計11曲を演奏。オリジナル・ヴォーカル・ヴァージョンのR&B色やノヴェルティ色がぐっと抑えめになって、楽曲の底辺に流れるジャジーな魅力をぐっと強調して聞かせてくれる。

リーバー&ストーラーの楽曲群の構造解明にも役立ちそうな奇盤・快盤です。

Tangled Tales / Dan Hicks & The Hot Licks (Surfdog/Victor)2009/03/18

Tangled Tales / Dan Hicks & The Hot Licks

日韓戦始まりました。どうなるんすかね。おなか痛いっすね。なんか、WBCは…というか、日韓戦って、妙に殺伐としたムードが漂っちゃって。ぼくが好きなプロ野球の感覚とは違いすぎるというか。のんびり楽しめないというか。でも、見ないわけにもいかないし。

今日も疲れそうだなぁ…。わぁ、1点取られた。

テレビの音消して、ダン・ヒックス聞いちゃおうかな(笑)。というわけで、ダン・ヒックスの新作。5月に来日があるみたいで。日本先行発売で出ました。5年ぶり。今回は派手なゲストもなく。チャーリー・マッスルホワイト、リチャード・グリーン、デイヴィッド・グリスマン、ロイ・ロジャース、ブルース・フォアマンなど通好みの腕利きが参加。ブルース・フォアマンがうれしいなぁ。リッチー・コールとのコンビで聞かせていたごきげんなジャズ・ギターが懐かしい。

1970年代中盤、ぼくはレオン・レッドボーンとかマーティン・マルとかタイニー・ティムとか、歪んだノスタルジア音楽が大好きで。もちろんダン・ヒックスも聞きまくったものだ。フォーク、ジャズ、カントリー、R&Bなど様々な音楽性を刺激的に交錯させ、そこにダン・ヒックスならではの屈折したユーモアやシニカルな批評性をまぶしたホット・リックス・ワールドは今なお大好き。今回の新作でも、長い休養期間を経て00年に復帰後の諸作同様、往年のコンセプトはそのまま、しっかり現在のシーンに通用する強いグルーヴを導入しつつ、でも持ち味のひょうひょうとした世界観を構築している。

ホレス・シルヴァーの「ソング・フォー・マイ・ファーザー」とかボブ・ディランの「サブタレイニアン・ホームシック・ブルース」とか、面白いカヴァーもあり。「サブタレイニアン…」なんか、こうやってカヴァーされてみると、ダン・ヒックスのために書かれたかのような曲で。楽しい。

The Complete Chess Masters: 1950-1967 / Little Walter (Hip-O Select/Geffen)2009/03/30

The Complete Chess Masters: 1950-1967 / Little Walter

全録音総まくり企画に関しては右に出る者なし。米ヒッポ・セレクトから、またごきげんなボックスが出た。

アンプリファイズド・ブルース・ハープ、つまりアンプにつながれたマイクを持って、そこにハーモニカをくっつけて、両手で覆うように持って、ナチュラル・ディストーションのかかったファンキーな音色でぶわわわ~っと吹きまくるスタイルの先駆者、リトル・ウォルターがチェス・レコードに残した全音源を詰め込んだCD5枚組だ。

この人の場合、これまでは93年の『ジ・エッセンシャル・リトル・ウォルター』と95年の『ブルース・ウィズ・ア・フィーリング』という2枚組アンソロジー×2を揃えるのがベストな選択だったわけだけれど。このアンソロジー2種に収められて世に出た未発表音源や別テイクなども全て含んだうえ、さらなる未発表音源をどかっと加えて編まれたのが今回のボックス。1950年にマディ・ウォーターズ名義でリリースされた「エヴァンス・シャッフル」から、37歳という若さで他界する前年、67年にバディ・ガイやオーティス・スパンらとともに録音された“スーパー・ブルース・セッション”の音源まで。全126トラックのグルーヴィなシカゴ・ブルースをおなかいっぱい堪能できる。

この人、他のアーティストのバックで披露する演奏ももちろん聞き逃せないものばかりなのだけれど。ちょっとチンピラっぽい歌声とともに展開する本人名義の音源も格別。マディ・ウォーターズ、ルーサー・タッカー、ロバート・ジュニア・ロックウッド、ウィリー・ディクソン、フレッド・ビロウら、バックを固める面々のドライヴ感も最高だ。

Bluegrass & Beyond / Bobby Osborne (Rounder)2009/03/31

Bluegrass & Beyond / Bobby Osborne

『ロック・ギタリスト伝説』、読んでくださった方からの感想とかたくさんいただきました。ありがとうございます。楽しんでくださっているようで、うれしいです。久々にギターを引っ張り出した、という方も多くて。仲間意識が強まりますねー。今度のCRTのゲストの中森さんも大いに楽しんでくれたみたい。公表しちゃっていいかどうかわかりませんが(って、公表しようとしてるんですが)、中森さん、読みながらかつての自分の姿と重ね合わせて涙ぐんじゃったそうです(笑)。仲間です。

そんな中、ひとつ大きな間違いに気づいちゃいました。すみません。ブレッドのデイヴィッド・ゲイツを取り上げている章なんですが。「二人の架け橋(Make It With You)」のコード進行、間違ってました。本で書いたコード進行およびコード・フォームは「Baby I'm-A Want You」のものです。混同してました。ケアレス・ミスです。本当に申し訳ない。

ここで書いても遅いですが、「Make It With You」のほうのコード進行は、Emaj7→F#m7/E の繰り返しです。コード・フォームは、Emaj7 が、6弦開放+5弦6フレット+4弦6フレット+3弦4フレット+2弦開放+1弦開放。F#m7/E が、それを2フレット分ヘッド側に移動した形で、6弦開放+5弦4フレット+4弦4フレット+3弦2フレット+2弦開放+1弦開放です。心からお詫びして訂正させていただきます。

と、ひたすら恐縮しつつ。本日のピック・アルバムです。キャリア半世紀。ロンサム・パイン・フィドラーズやオズボーン・ブラザーズで大活躍してきたボビー・オズボーンの新作だ。2年ぶり。06年にラウンダー・レコードに移籍してからは着実な新作リリースが続いている。80歳近いのに。すげえ。

伝統的ブルーグラスからホンキー・トンク・スタイルのカントリーまで。枯淡の境地に達していながら、スピード感や鋭さも衰えず。あ、いや、まあ、もちろん衰えてはいるけれど。体力ではなく、テクニックでその辺を見事カバーしてみせる。熟練したピッチャーみたいな感じすかね。陽気さと切なさと、何よりも深い敬虔さがしみます。これぞ本当のスピリチュアル。マーティ・ステュアート、コニー・スミス、ロンダ・ヴィンセントらが客演。マーティ&コニーが参加したトラディショナル曲「What Would You Give in Exchange for Your Soul」が特にぐっときます。