Odessey & Oracle {Revisited}: 40th Anniversary Live Concert / The Zombies (Redhouse)2009/05/15

Odessey and Oracle {Revisited}: 40th Anniversary Live Concert / The Zombies

ニール・ヤングのアーカイヴ・ボックス。オフィシャル・サイトでヤングさんの強いおすすめに従ってブルーレイ版を予約したら、発売に先駆けて予約特典の"Preview Disc" ってのが届きましたよ。ザ・スクワイアーズ時代のシングル音源から始まって、バッファローのボックスでも聞けた曲の別ヴァージョンとか、初期のレアものがずらり。事前発表された『アーカイヴズVOL.1』の曲目表と見比べると、あそこにディスク0としてリストアップされていた内容が今回届いたプレビュー・ディスクと同じみたいだけど。まあ、一足先に楽しめたってことで。現在の吼えまくりオヤジっぽいイメージからは想像もできない、初々しいヤング青年の魅力が堪能できます。

さすがブルーレイならではのマルチな操作性で、曲をファイル・キャビネットで探索しながら、資料を見たり、歌詞を見たり、タイムライン検索をしたり、なかなか楽しい。音だけ聞きたいときにはちょっとまどろっこしいけれど、今後のアンソロジーものの在り方の可能性のひとつではあるな、と。興味深い。

まあ、このアーカイヴ・ボックスに関しては6月に正式リリースされてから取り上げたほうがいいかな。ニール・ヤングに関しては明日、ネイキッド・ロフトでのCRTで森達也×鈴木慶一という豪華ゲスト競演のもと、たっぷり味わう予定なので、そちらのほうもぜひお楽しみに。新作『フォーク・イン・ザ・ロード』のことはもちろん、結局日本では公開もDVD発売もされていないヤング監督によるドキュメンタリー映画『デジャ・ヴ』のことにも深く分け入って行ければ、と思ってます。

ということで、今回のピックアップ・アルバムはまた別物。ゾンビーズ、いきましょう。イギリスでは去年半ばに出た盤だけれど、ようやく今月MSIから国内配給もされることになったので、遅ればせながら取り上げておきます。

一昨年の9月、ロンドンにブライアン・ウィルソンのライヴを見に行ったとき、オフ日にブライアン・バンドの中心メンバーでもあるダリアン・サハナジャと食事をして。そのとき、彼が「今度、実はゾンビーズの再結成ステージに参加するんだ」という話をしていた。なんでも、かの名盤『オデッセイ&オラクル』の発売40周年を祝して、ゾンビーズがアルバムの全曲ライヴ演奏をやることになっていて。その話をメンバーから聞いたダリアンは「いいね、絶対に見に来るよ」と言ったところ、「見に来るんだったら、バンドに参加してくれ」と言われたのだとか。まあ、ダリアンの場合、ビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』や『スマイル』、ラヴの『フォーエヴァー・チェンジズ』など、往年の名盤をライヴで全曲再現することにかけてはもう職人というか。過去の名作への深い敬愛と豊かな知識は並じゃない。絶対必要な人材なのだろう。

そんなダリアンの予言通り、故ポール・アトキンソンを除くゾンビーズのオリジナル・メンバーが勢揃い。ダリアンを含むサポート・メンバーを従えて40年前の名盤をライヴの場で初完全再現してみせた。本盤はその記録だ。2枚組で。ディスク1が「ケア・オヴ・セル44」に始まり「ふたりのシーズン」で終わる『オデッセイ&オラクル』編。ディスク2がゾンビーズのレパートリーおよびメンバーのソロ曲からの名曲集。これもなかなかコーフンもの。「テル・ハー・ノー」「シーズ・ノット・ゼア」「好きさ好きさ好きさ」あたりはもちろん、コリン・ブランストーンの「ミスティ・ローゼズ」とか、もう泣けます。ストリングス・セクションもバックに配されて。完璧だ。

実は先日ロンドンに行ったとき、ゾンビーズはこの『オデッセイ&オラクル』ライヴをまだやっていたんだよなぁ。ロンドン公演もあって。でも、その日はボブ・ディランのO2アリーナ公演の日で。残念ながら生で見ることはできなかったのだけれど。惜しかった…。

Legend Of Rock Guitarists / Compiled by Umezo Kato (iMix)2009/05/22

ロック・ギタリスト伝説

 3月に出したぼくの新刊『ロック・ギタリスト伝説』ですが。多くの方がブログで紹介してくださっていたり。CRTのほうでは、取り上げたギタリストたちの映像を集めたDVDを独自に作ってくださったお客さんがいらっしゃったり。みなさんのうれしい応援のおかげで地道に売れ続けているみたいです。感謝します。

 で、今度はなんとロフトの加藤梅造プロデューサーがiTunesでこんなiMixを作ってくれました。日本ではソニーがiTunesに音源を提供していないので、一部の楽曲が揃わない状況ですが、とにかくこれまたうれしい労作です。これがあれば『ロック・ギタリスト伝説』をより立体的に楽しんでいただくことができそう。iTunesをインストールされている方は、ぜひチェックしてみてください。

ロックギタリスト伝説(萩原健太・著)登場曲
さまざまなアーティスト

合計曲数: 22
日付: 2009/5/17

iTunes


Where The Girls Are, Volume 7 / Various Artists (Ace)2009/05/24

Where The Girls Are, Vol. 7

英Aceが重箱の隅をつっつく感じでコンパイルし続けているガール・グループ・コンピ・シリーズ“Where The Girls Are”。なんと今年の3月に第7弾が出てたんすね。見逃してました。やばいやばい。てことで、さっそく購入。

大ヒットものではなくて、通常のガール・グループ・コンピには入りそうもないレアなところを基本にコンパイルされているシリーズなので、あまり広くおすすめできるものではないけれど。ドゥーワップとかガール・グループものって、1曲好きなら全部好き、みたいなジャンルだから。油断はできない。さすがに第7弾ともなると普通は出尽くし感も漂ってくるものだが、そこはAce。数々の未発表音源などもふんだんに盛り込みつつ、それなりに手応えある仕上がりだ。

アダルト・コンテンポラリー・ファンにおなじみ、JT人脈のひとりでもあるデイヴィッド・ラズリーが1965年に手がけたユートピアズの音源とか、楽しい。シャングリラスのまるパクリみたいな感じで。いかしてます。ジュエルズがかつてのシングルB面曲「スモーキー・ジョーズ」をファンキーにリメイクしたージョンとか、シレルズのLPに収められていたプレイメイツのカヴァー「ホワット・イズ・ラヴ」とか、60年代後半の音源も興味深い。去年出たビッグ・トップ・レコードのコンピでようやく良好な音質での正規CD化が実現したアンドレア・キャロルの「ザ・ドゥーラング」も入ってます。

未発表ものは9曲。クローディン・クラークのダブル・トラック・ヴォーカルによる「パーティ・ライツ」とか面白い。けど、個人的にはなんたってサティスファクションズかな。ライノが帽子の箱を模して出したガール・グループものの必殺コンピ『One Kiss Can Lead To Another』とか、エースの“Phil's Spectre”シリーズとかでもその歌声を聞くことができるサスティスファクションズ。ご存じ、ジャック・ニッチェの奥様であるグラシア・ニッチェのヴォーカルをフィーチャーしたスタジオ・グループですが。今回はマン&ワイル作の名曲「ア・ウーマン・イン・ラヴ(ウィズ・ユー)」の未発表ヴァージョンが聞ける。スペクターのレア音源系コンピにロネッツのヴァージョンで入っていたり、ジャック・ニッチェの作品集にドナ・ローレン・ヴァージョンで入っていたりした、あの曲です。

ニッチェ絡みだとメリー・クレイトンが1962年にリリースしたデビュー・シングルも入ってます。ジョー・サラシーノとの共同プロデュースです。

The Complete Liberty Singles / Gary Lewis & The Playboys (Collectors' Choice/EMI)2009/05/30

The Complete Liberty Singles / Gary Lewis & The Playboys

世襲ってのがいろいろ話題になってますが。

ポップ・ミュージックの世界にもたくさんの二世がいる。イナラ・ジョージ、マイリー・サイラス、ルーファス・ウェインライト、ジェイコブ・ディラン、ロザンナ・キャッシュ、ムーン・ザッパ、ドウィージル・ザッパ、デビー・ブーン、ダラ・セダカ、クリス・スティルス、ベック、ウィルソン・フィリップス、ジュリアン・レノン、ジェフ・バックリー、リサ・マリー・プレスリー…。テキトーに思いだしただけで膨大な数の二世アーティストの名前が頭に浮かぶ。カントリーの祖、ハンク・ウィリアムスの息子のハンク・ウィリアムス・ジュニア、さらにその息子のハンク三世みたいに親子孫三代に及ぶ連中もいるくらいだ。ポップ・ミュージックの歴史も長いっすね。まじに。

二世シンガーのやり方というのは大きく二通りあって。リー・ヘイズルウッドやビリー・ストレンジといった有能なプロデューサー/アレンジャーを得て、ほんの数年間とはいえ父親とはひと味違う独自のポップ路線を切りひらいたナンシー・シナトラになるのか、父親とも親交の深いドン・コスタらをプロデューサーに、父親同様のスタンダード寄り路線で地味な歩みを続けたフランク・シナトラ・ジュニアになるのか。この辺、誰もが悩むところだろうけど。聞く側としては、まあ、どっちもがんばれ、と。親戚の子のピアノ発表会を見るような気分で応援してしまう。

で、そんな二世アーティストの中でも、ぼくが特に好きなのはこの人、ゲイリー・ルイスだ。ご存じ、ジェリー・ルイスの息子さん。基本的には俳優というかコメディアンというか、そういう人の息子なので、ちょっと畑違い気味だけど。お父さんもレコード出してるし、息子も俳優やってるし。いいんじゃないでしょうか。

1946年、ニューヨーク生まれ。その後、西海岸へと移り、64年にロサンゼルスで仲間とロック・バンドを結成。それがゲイリー・ルイス&ザ・プレイボーイズだ。ディズニーランドへのレギュラー出演をきっかけにリバティ・レコードと契約したってエピソードもごきげん。ウソでもOK。名プロデューサー、スナッフ・ギャレットの後押しを得ながら65年以降、「恋のダイアモンドリング」「カウント・ミー・イン」「君のハートは僕のもの」「涙のクラウン」「あの娘のスタイル」など次々と大ヒットを連発した。

そんな彼らが1965~70年にリバティからリリースしたシングル盤のAB面、コンパクト盤音源、プロモ盤音源などを総まくりしたコンピレーションが今回のピック・アルバムだ。いい意味でおぼっちゃんっぽいゲイリーのイノセントなヴォーカルと、スナッフ・ギャレット、レオン・ラッセルら腕利きスタッフがレッキング・クルーの面々を駆使しながらその才能を余すところなくつぎ込んだ珠玉のポップ・サウンドとの素晴らしい合体。ゲイリー・ルイス&ザ・プレイボーイズのオリジナル・アルバム群の再発もそれなりに実現してはいるけれど、やはりアルバムよりもシングルで楽しむべき人たちだけに、このコンピこそが必殺って感じ。

ギャレット/ラッセル/ルイス作の名曲の数々はもちろん、ゲルド&ユデル、スローン&バリ、クック&グリーナウェイ、アル・クーパーなど素敵なソングライターたちの“いい仕事”を満載。初夏に聞くには最適なんじゃないすかね。