The Excitement Plan / Todd Snider (Yep Roc)2009/06/15

The Excitement Plan / Todd Snider

ニール・ヤングのアーカイヴスがようやく届いて。ここでも紹介したいなと思ってはいるんですが。なにせブルーレイ10枚組。なかなか全部を視聴できません(笑)。すべてを味わい尽くせるのはいつのことになるのやら。

てことで、今回ご紹介はトッド・スナイダー。ストーリーテリングの巧みさにかけて、抜群の魅力を持つナッシュヴィルのシンガー・ソングライター、8作目のスタジオ・アルバムだ。ユニヴァーサル傘下のニュー・ドア・レーベルから06年に出たひとつ前のフル・アルバム『ザ・デヴィル・ユー・ノウ』では、メジャーからの再出発ってこともあってか、気合一発、久々にデビュー当時を思わせるロック魂を爆発させていたスナイダーさんですが。今回は00年にジョン・プラインのオー・ボーイ・レーベルに移籍してからの諸作に通じるアコースティカル&ルーツィな方向性。やっぱ、こっちのほうがしみます。(オー・ボーイからの移籍第一弾のこと、その昔、ここで軽く紹介してます。ご興味のある方はどうぞ)

プロデュースはドン・ウォズ。ウォズと、グレッグ・レイズと、ジム・ケルトナーがさりげなく、しかし的確なバッキングを提供している。ほとんどリハーサルせずに、ほんの2日半でアルバム1枚完成させてしまったらしい。ラフさとシンプルさがいい方向に出た仕上がりだ。隙間が心地よい。

収録曲は基本的に自作。でも、1曲ロレッタ・リンと共作していたり、テキサス出身のシンガー・ソングライター、ロバート・アール・キーン・ジュニアの曲を取り上げていたり。そのあたりも興味深い。曲によってはランディ・ニューマンにも通じるグッド・オールド・タイミーかつシニカルな表情を感じさせてくれたりもして。時にはソウルフルでもあり。歌詞はまだ把握しきれてませんが、相変わらず知的にやさぐれている感触もあって。やっぱ、この人の底力、なかなかのものっすね。

The Ventures in Japan / The Ventures (Liberty/EMI)2009/06/16

The Ventures in Japan / The Ventures

 このところ、ケニー・ランキンが亡くなったり、バリー・ベケットが亡くなったり。訃報が次々立て続けに飛び込んできて。淋しい思いをしていますが。今また、ボブ・ボーグルが亡くなったという衝撃のニュースが伝わってきました。

 ご存じ、ベンチャーズの創設メンバーのひとり。近年は体調が思わしくなく、05年以降、恒例の来日ツアーにも参加しなくなっていて。日本のファンもみんな大いに心配していたものですが。ついにそのときがやってきてしまいました。長い闘病ののち、現地時間の6月14日、地元ワシントン州ヴァンクーヴァーで他界。享年75。

 彼らがロックンロール・ヒストリーで果たした大きな役割については、先日出した新書『ロック・ギタリスト伝説』でもたっぷり書かせてもらいましたが。特に、もともとリード・ギタリストだったボブ・ボーグルが、名手ノーキー・エドワーズと交替する形でベーシストの座についたことも、彼らの唯一無二のサウンド作りに大きく貢献しました。元ギタリストならではの、ハイ・ポジションも駆使したボブのスピーディなベース・フレーズが、故メル・テイラーの突っ込み気味のドラムと一体となって生み出すロックンロール・グルーヴは本当に最高でした。

 そんなわけで、今回のピック・アルバムはニュー・リリースではなく。ボブ・ボーグル、ドン・ウィルソン、ノーキー・エドワーズ、メル・テイラーという最強のフル・ラインアップによる初来日を果たし、日本中をエレキの熱狂に巻き込んだ65年1月のライヴ・パフォーマンスを収めた大傑作アルバム。今なお色あせぬ歴史的ライヴ演奏を聞きながら、ボブ・ボーグルの冥福を祈りましょう。

 あまりにも何度も来日してくれるので、ベンチャーズのことを、日本でしか人気のない“歌のない歌謡曲バンド”と思い込んでいるフトドキな方もいらっしゃるようですが。そういう方は、08年、ベンチャーズがロックンロール名誉の殿堂入りを果たしたときの模様がYouTubeにもアップロードされているので、ぜひそちらもご覧ください。ステージ上にはすでにボブの姿はないけれど、元気なころのインタビューやステージでの様子なども挟み込まれています。



Bible Belt / Diane Birch (S-Curve)2009/06/26

Bible Belt / Diane Birch

訃報ばっかりで…。

大きな時代の変わり目が来ているってことかな。世紀が本格的に変わるのに10年かかるって話もあって。そういう意味では、20世紀がとうとう終わった、と。マイケル、ファラ、ジェイ・ベネット、ボブ・ボーグル、ケニー・ランキン、バリー・ベケット…。r.i.p.

20世紀は終わっても、20世紀の遺産は今も生き続けています。萩原祐子に教えてもらった新人シンガー・ソングライター、ダイアン・バーチ。もう輸入盤屋さんでは大いに盛り上がっているようですが。ローラ・ニーロ、キャロル・キング、カーリー・サイモン、フィービ・スノウ、スティーヴィ・ニックス、カーペンターズなどなど、60~70年代の偉大なアーティストたちを想起させる要素がアルバムのそこかしこにちりばめられていて。おじさんの涙腺がゆるみます。エルトン・ジョンっぽい曲もあります。いいもの教えてもらいました。

牧師の娘さんだとかで。ミシガン生まれながら、世界各国を転々としてきたらしい。それゆえ、古き良きアメリカの遺産のようなものに冷静なまなざしで素直に対することができたのかもしれない。アルバム・タイトルも含め、どういう宗教観/人生観を持った人なのか、微妙なところだけれど。その辺はおいおい聞き込んでみようかな。わかりやすく敬虔な思いを託した「フォーギヴネス」なんて曲もあって。アレサ・フランクリンあたりに通じるゴスペル感覚も炸裂している。

まだまだ“薄い”面もないわけじゃないけれど、ソウル・クイーン、ベティ・ライトをはじめ、興味深いスタッフ陣がかっちりバックアップ。今後が楽しみな個性です。