From Elvis in Memphis (Legacy Edition) / Elvis Presley (RCA/Legacy)2009/08/13

From Elvis in Memphis (Legacy Edition) / Elvis Presley

Twitter のほうでつぶやいたりしていたので、ご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが。BlackBerry Bold のトラックボールのクリックが効かなくなっちゃって。エンターキーでほとんど代用できるとはいえ、操作性が今いちなので。 docomo ショップに持っていきました。

しかし、 docomo はもう BlackBerry 売る気がないのかも。店員の方も最初は愛想よく寄ってきてくれるんだけど、ぼくが手にしているのが BlackBerry だとわかると、「ぁ…」って息をのんで、笑顔が凍り付くんだよなぁ(笑)。

結局、なぜトラックボールのクリックが効かなくなったのか、原因が解明されることもなく、ソッコー、本体全取っ替えってことになって。この辺にも逆に docomo の腰の引け具合が透けて見えるというか。面倒が無くてよかったとはいえ、なんか淋しい。

交換用の端末がショップに届くまで2日かかるってことで、その間、久々に iPhone をメインの座に戻して使ってみたものの。妙に使い心地が鬱陶しかったなぁ。見た目はかっこいいんだけど。やっぱり物理キーボードがあるかないかは大きいです。タッチパネル、めんどくさい。ショートカット・キー一発でいろいろできる BlackBerry の快適さを覚えちゃうと、画面をずらしたりアイコン探して押したりって iPhone の作業が回りくどく感じるのも事実。マルチタスクの面でも iPhone は弱いし。

まあ、もちろん iPhone は日本でもかなり売れていて、みなさん便利に使っているようだから、この鬱陶しさってのも、あくまでぼくの使い方の範囲内での話なんだけど。 BlackBerry の底力を逆説的に思い知った数日間でありました。 docomo も、もっとうまく売ればいいのに。

今回ピックアップしたアルバムとかも、もっと日本でうまく売ってくれれば…と願う作品。エルヴィス・プレスリーが1969年6月にリリースした大傑作アルバム『フロム・エルヴィス・イン・メンフィス』の発売40周年記念レガシー・エディションだ。56年の全米デビュー以来、ほとんどの楽曲をナッシュヴィルかハリウッドで録音してきたエルヴィスが、69年1~2月、自らの音楽的故郷であるテネシー州メンフィスへと立ち返って行った歴史的レコーディング・セッションで録音された楽曲を集めた名盤だけれど。

この伝説のセッションでは全32曲がレコーディングされていて。『フロム・エルヴィス…』に収められなかったものはシングルとしてリリースされたり、同じ69年の11月、当時日本では『豪華盤プレスリー・イン・パースン』なる邦題のもとリリースされた2枚組LPのディスク2『フロム・ヴェガス・トゥ・メンフィス』(のちに『バック・イン・メンフィス』というタイトルで1枚ものとして再発)に収められて世に出たり。

あれこれバラけていたわけだけれど。今回はその辺の音源を一気にまとめあげる形で2枚組レガシー・エディション化が実現した。ディスク1には『エルヴィス・イン・メンフィス』のオリジナルLP収録曲をすべて曲順通り並べたうえで、70年代に入ってから他のアルバムの収録曲として五月雨式に世に出たメンフィス・セッション音源をボーナス楽曲として追加。そしてディスク2には『フロム・ヴェガス・トゥ・メンフィス(バック・イン・メンフィス)』の収録曲すべてをオリジナル曲順で並べ、その後にやはりこのセッションから生まれたシングル曲の貴重なモノラル・ミックスをずらりボーナス追加している。

当初から1枚ものとしてリリースされた『エルヴィス・イン・メンフィス』は、エルヴィス・ファン以外からも名盤として高く評価されているものの、『フロム・ヴェガス・トゥ・メンフィス(バック・イン・メンフィス)』のほうはエルヴィス・ファンの間ですら人気が今ひとつ。99年、やはりこのメンフィス・セッションの音源を編纂した2枚組『サスピシャス・マインド~メンフィス1969アンソロジー』が出たときも、『エルヴィス・イン・メンフィス』のほうはオリジナルLP通りの曲順で入っていたのに対し、『フロム・ヴェガス・トゥ・メンフィス(バック・イン・メンフィス)』のほうは曲順バラバラでの収録だった。いわばアウトテイク扱い。どちらのアルバムもそれこそ盤がすり切れるほど愛聴してきた身としては実に複雑な気分だった。が、そんなもやもやも、今回のレガシー・エディションの登場で一気に晴れました。

チップス・モーマンのプロデュースのもと、彼のアメリカン・サウンド・スタジオで、当時の南部ミュージック・シーンで大活躍していた旬のミュージシャンたちの強力なバックアップを受け、カントリー、R&B、ブルース、さらにはバカラック・ナンバーまで、様々な音楽要素をごった煮にしながら、エルヴィスは69年ならではの素晴らしい南部ロックンロールを作り上げてみせた。レジー・ヤングのスワンプ風味あふれるギター、トミー・コグビルのファンキーなベース・ライン、アル・ジャクソンの白人版継承者とも言うべきジーン・クリスマンのドライヴ感に満ちたドラム…。地元へ帰って心機一転、意欲に満ちたエルヴィスの歌声の勢いに触発されながら、彼ら腕利きミュージシャン群が存分に本領を発揮した圧倒的なスワンプ・フィーリングが、やがて70年代初頭、新たな黄金時代を迎えるエルヴィス・サウンドのアイデンティティへと結実していくことになるのだけれど。

国内盤も9月には出る。これもライナー書かせていただきました。光栄です。でも、9月になるとビートルズの再発があるから一気に話題をそっちに持っていかれちゃいそう(笑)。泣ける。もったいないので、今のうちに騒いでおきます。64年、ビートルズのアメリカ襲来によってエルヴィスが過去のものになった、みたいな言い方をされることが多いのだけれど、そのビートルズが後味の悪い解散劇を繰り広げ始めた69年、エルヴィスは再度自らの足下を見つめ直す形でこれほど力強い傑作でシーン最前線に舞い戻ってきたわけだ。エルヴィス、すごいっす。まじに。

Blood From Stars / Joe Henry (Anti-)2009/08/17

Blood From Stars / Joe Henry

さあ、いよいよ明日、18日はCRTですよ。エリック・クラプトン・ナイト。誰もが知ってるような気になっているけれど、実は全体像があまり知られていないアーティストの代表格みたいなところもあって。でも、先日の来日公演を見たり、去年のスティーヴ・ウィンウッドとの共演ライヴ映像を見たりすると、やっぱりとてつもなくすごい人であることは確かで。そんなクラプトンの魅力を青山陽一+中森泰弘+萩原健太の“ギター長屋”トリオが中心になって、あーだこーだ解きほぐしていこう、と。そんな夜になればいいなと思ってます。

自伝とか読んでみると、クラプトンってほんとにダメ男というか。子供のころから、大好きなブルースの世界にどっぷり浸り込む以外は、もうセックスのことしか考えてないみたいな(笑)。わかりやすいような、わかりにくいような。とにかく“振り切った”人だったようで。その実生活でのダメさかげんと音楽面での超絶さとの共存具合がなんとも魅力的だなぁ、などと凡人としては思ったりもするのだけれど。

いろんな角度からクラプトンのブルース感のようなものにアプローチしていきましょう。左のインフォメーション欄を参照していただいて、こぞってご参加を。お待ちしてます。てことで、本日のピックアップ・アルバムは、クラプトンとはまた違った形でブルースの表現を自分のものにした感じのジョー・ヘンリーの1枚です。

手応えたっぷりの『シヴィリアンズ』に続く2年ぶりの新作。といっても、その間、アラン・トゥーサンの『ブライト・ミシシッピ』、ランブリン・ジャック・エリオットの『ア・ストレンジャー・ヒア』のプロデュースを手がけていて。その辺からの影響もたたえた素晴らしく深く豊かな仕上がりになってます。

これまで通り、本作でもジョー・ヘンリーは曲ごとにいろいろな人格になりきって、様々な感情が複雑に渦巻く心象を綴っていくわけだけれど。ランディ・ニューマンやトム・ウェイツ、ハリー・ニルソンなど、近い方向性を持った先達のようなシニカルさが全面に出ないところがこの人の持ち味かも。まっすぐ聞く者の胸に突き刺さる歌声のせいかな。メソッド・アクター的といえばいいのか、そういう表現力にもかなり磨きがかかってきた感じ。

のっけ、ジェイソン・モランの切ないピアノ演奏によるプレリュードに続いて聞こえてくる「ザ・マン・アイ・キープ・ヒド」の冒頭の歌詞で、いきなりジョー・ヘンリーは“俺が心の中に隠し続けている男のことは誰も知らない”と歌い出す。ひと声目でいきなりぞくっとくる。まだあまり歌詞全体のことを把握できていないけれど、ブルース形式を取り入れつつ、よりリリカルに昇華した表現が随所に聞き取れるような…。

ジェイ・ベレローズ、デイヴィッド・ピルチ、パトリック・ウォーレン、マーク・リボーらを迎えて、サウス・パサディナの自宅地下のスタジオで録音。さすが、シンプルな中にもこの上ない緊張感とスリルをたたえた音作りで。圧倒されます。自宅ってこともあって、息子のリヴォンもサックスで参加している。ちゃんと宿題を終えてからのレコーディングだったそうです(笑)。とつとつとした中にも、確かな歌心を感じさせるサックスが聞けます。

Taking Care of Business: 1956-1973 / Freddie King (Bear Family)2009/08/31

Taking Care of Business: 1956-1973 / Freddie King

日本は変わりますかね? 変わってほしいっすね。心からそう思います。

でも、ぼくが聞いている音楽は相変わらず。エリー・グリニッチやラリー・ネクテル、ウィリー・デヴィルらの訃報が次々と舞い込み、自分がいきいきと属していた時代の本格的な終焉を思い知りつつも、結局心は50~70年代へ。というわけで、今回もそんなアルバムのご紹介。フレディ・キング、究極のボックス・セットです。タイトル通り1956年から73年まで、エル・ビー、フェデラル、キング、コティリオン、シェルターといったレーベルに残された全てのスタジオ音源168トラックを7枚のCDに詰め込んだ箱です。誰よりもでかい音で、誰よりも凶悪なギター・プレイを聞かせたフレディ・キングのごっついブルース・スピリットをおなかいっぱい、これでもかと浴びるように楽しめる仕上がりです。

「ハイド・アウェイ」「サン・ホー・ゼイ」「ロウ・タイド」「ウォッシュ・アウト」「ドライヴィング・サイドウェイズ」「レミントン・ライド」「ロンサム・ホイッスル・ブルース」など、必殺のヒット・チューンはもちろん、未発表音源も満載。「ユーヴ・ガット・トゥ・ラヴ・ハー・ウィズ・ア・フィーリング」とか「ハヴ・ユー・エヴァー・ラヴド・ア・ウーマン」とかの未発表別テイクも聞けます。68年、ダラスで収録された未発表デモ・セッション(J.B.ルノアの「ザ・モジョ」もやってる!)もコンプリートで楽しめるし。タイトルすら付けられていない未発表インストも3曲くらい入っているし。

テキサス・スタイルとシカゴ・スタイルとが絶妙に入れ乱れるフレディ節の魅力を改めて思い知ることができる。エリック・クラプトンにせよ、ヴォーン兄弟にせよ、フレディ・キングの影響を受けていないブルース・ギタリストなんていないというか。フレディ・キングの影響を受けてなければブルース・ギタリストじゃないとすら思う。あ、もちろんギターだけじゃなくて、ヴォーカルもごきげんです。

この人の場合、いろんな時代のいろんなベストがたくさん編まれてきたけれど。どれも一長一短。この箱こそが決定版だ。って、当たり前か。全部入りだもんね(笑)。でも、フレディ・キングのパフォーマンスは全部が宝ってことで。