Taking Care of Business: 1956-1973 / Freddie King (Bear Family)2009/08/31

Taking Care of Business: 1956-1973 / Freddie King

日本は変わりますかね? 変わってほしいっすね。心からそう思います。

でも、ぼくが聞いている音楽は相変わらず。エリー・グリニッチやラリー・ネクテル、ウィリー・デヴィルらの訃報が次々と舞い込み、自分がいきいきと属していた時代の本格的な終焉を思い知りつつも、結局心は50~70年代へ。というわけで、今回もそんなアルバムのご紹介。フレディ・キング、究極のボックス・セットです。タイトル通り1956年から73年まで、エル・ビー、フェデラル、キング、コティリオン、シェルターといったレーベルに残された全てのスタジオ音源168トラックを7枚のCDに詰め込んだ箱です。誰よりもでかい音で、誰よりも凶悪なギター・プレイを聞かせたフレディ・キングのごっついブルース・スピリットをおなかいっぱい、これでもかと浴びるように楽しめる仕上がりです。

「ハイド・アウェイ」「サン・ホー・ゼイ」「ロウ・タイド」「ウォッシュ・アウト」「ドライヴィング・サイドウェイズ」「レミントン・ライド」「ロンサム・ホイッスル・ブルース」など、必殺のヒット・チューンはもちろん、未発表音源も満載。「ユーヴ・ガット・トゥ・ラヴ・ハー・ウィズ・ア・フィーリング」とか「ハヴ・ユー・エヴァー・ラヴド・ア・ウーマン」とかの未発表別テイクも聞けます。68年、ダラスで収録された未発表デモ・セッション(J.B.ルノアの「ザ・モジョ」もやってる!)もコンプリートで楽しめるし。タイトルすら付けられていない未発表インストも3曲くらい入っているし。

テキサス・スタイルとシカゴ・スタイルとが絶妙に入れ乱れるフレディ節の魅力を改めて思い知ることができる。エリック・クラプトンにせよ、ヴォーン兄弟にせよ、フレディ・キングの影響を受けていないブルース・ギタリストなんていないというか。フレディ・キングの影響を受けてなければブルース・ギタリストじゃないとすら思う。あ、もちろんギターだけじゃなくて、ヴォーカルもごきげんです。

この人の場合、いろんな時代のいろんなベストがたくさん編まれてきたけれど。どれも一長一短。この箱こそが決定版だ。って、当たり前か。全部入りだもんね(笑)。でも、フレディ・キングのパフォーマンスは全部が宝ってことで。

Blood From Stars / Joe Henry (Anti-)2009/08/17

Blood From Stars / Joe Henry

さあ、いよいよ明日、18日はCRTですよ。エリック・クラプトン・ナイト。誰もが知ってるような気になっているけれど、実は全体像があまり知られていないアーティストの代表格みたいなところもあって。でも、先日の来日公演を見たり、去年のスティーヴ・ウィンウッドとの共演ライヴ映像を見たりすると、やっぱりとてつもなくすごい人であることは確かで。そんなクラプトンの魅力を青山陽一+中森泰弘+萩原健太の“ギター長屋”トリオが中心になって、あーだこーだ解きほぐしていこう、と。そんな夜になればいいなと思ってます。

自伝とか読んでみると、クラプトンってほんとにダメ男というか。子供のころから、大好きなブルースの世界にどっぷり浸り込む以外は、もうセックスのことしか考えてないみたいな(笑)。わかりやすいような、わかりにくいような。とにかく“振り切った”人だったようで。その実生活でのダメさかげんと音楽面での超絶さとの共存具合がなんとも魅力的だなぁ、などと凡人としては思ったりもするのだけれど。

いろんな角度からクラプトンのブルース感のようなものにアプローチしていきましょう。左のインフォメーション欄を参照していただいて、こぞってご参加を。お待ちしてます。てことで、本日のピックアップ・アルバムは、クラプトンとはまた違った形でブルースの表現を自分のものにした感じのジョー・ヘンリーの1枚です。

手応えたっぷりの『シヴィリアンズ』に続く2年ぶりの新作。といっても、その間、アラン・トゥーサンの『ブライト・ミシシッピ』、ランブリン・ジャック・エリオットの『ア・ストレンジャー・ヒア』のプロデュースを手がけていて。その辺からの影響もたたえた素晴らしく深く豊かな仕上がりになってます。

これまで通り、本作でもジョー・ヘンリーは曲ごとにいろいろな人格になりきって、様々な感情が複雑に渦巻く心象を綴っていくわけだけれど。ランディ・ニューマンやトム・ウェイツ、ハリー・ニルソンなど、近い方向性を持った先達のようなシニカルさが全面に出ないところがこの人の持ち味かも。まっすぐ聞く者の胸に突き刺さる歌声のせいかな。メソッド・アクター的といえばいいのか、そういう表現力にもかなり磨きがかかってきた感じ。

のっけ、ジェイソン・モランの切ないピアノ演奏によるプレリュードに続いて聞こえてくる「ザ・マン・アイ・キープ・ヒド」の冒頭の歌詞で、いきなりジョー・ヘンリーは“俺が心の中に隠し続けている男のことは誰も知らない”と歌い出す。ひと声目でいきなりぞくっとくる。まだあまり歌詞全体のことを把握できていないけれど、ブルース形式を取り入れつつ、よりリリカルに昇華した表現が随所に聞き取れるような…。

ジェイ・ベレローズ、デイヴィッド・ピルチ、パトリック・ウォーレン、マーク・リボーらを迎えて、サウス・パサディナの自宅地下のスタジオで録音。さすが、シンプルな中にもこの上ない緊張感とスリルをたたえた音作りで。圧倒されます。自宅ってこともあって、息子のリヴォンもサックスで参加している。ちゃんと宿題を終えてからのレコーディングだったそうです(笑)。とつとつとした中にも、確かな歌心を感じさせるサックスが聞けます。

From Elvis in Memphis (Legacy Edition) / Elvis Presley (RCA/Legacy)2009/08/13

From Elvis in Memphis (Legacy Edition) / Elvis Presley

Twitter のほうでつぶやいたりしていたので、ご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが。BlackBerry Bold のトラックボールのクリックが効かなくなっちゃって。エンターキーでほとんど代用できるとはいえ、操作性が今いちなので。 docomo ショップに持っていきました。

しかし、 docomo はもう BlackBerry 売る気がないのかも。店員の方も最初は愛想よく寄ってきてくれるんだけど、ぼくが手にしているのが BlackBerry だとわかると、「ぁ…」って息をのんで、笑顔が凍り付くんだよなぁ(笑)。

結局、なぜトラックボールのクリックが効かなくなったのか、原因が解明されることもなく、ソッコー、本体全取っ替えってことになって。この辺にも逆に docomo の腰の引け具合が透けて見えるというか。面倒が無くてよかったとはいえ、なんか淋しい。

交換用の端末がショップに届くまで2日かかるってことで、その間、久々に iPhone をメインの座に戻して使ってみたものの。妙に使い心地が鬱陶しかったなぁ。見た目はかっこいいんだけど。やっぱり物理キーボードがあるかないかは大きいです。タッチパネル、めんどくさい。ショートカット・キー一発でいろいろできる BlackBerry の快適さを覚えちゃうと、画面をずらしたりアイコン探して押したりって iPhone の作業が回りくどく感じるのも事実。マルチタスクの面でも iPhone は弱いし。

まあ、もちろん iPhone は日本でもかなり売れていて、みなさん便利に使っているようだから、この鬱陶しさってのも、あくまでぼくの使い方の範囲内での話なんだけど。 BlackBerry の底力を逆説的に思い知った数日間でありました。 docomo も、もっとうまく売ればいいのに。

今回ピックアップしたアルバムとかも、もっと日本でうまく売ってくれれば…と願う作品。エルヴィス・プレスリーが1969年6月にリリースした大傑作アルバム『フロム・エルヴィス・イン・メンフィス』の発売40周年記念レガシー・エディションだ。56年の全米デビュー以来、ほとんどの楽曲をナッシュヴィルかハリウッドで録音してきたエルヴィスが、69年1~2月、自らの音楽的故郷であるテネシー州メンフィスへと立ち返って行った歴史的レコーディング・セッションで録音された楽曲を集めた名盤だけれど。

この伝説のセッションでは全32曲がレコーディングされていて。『フロム・エルヴィス…』に収められなかったものはシングルとしてリリースされたり、同じ69年の11月、当時日本では『豪華盤プレスリー・イン・パースン』なる邦題のもとリリースされた2枚組LPのディスク2『フロム・ヴェガス・トゥ・メンフィス』(のちに『バック・イン・メンフィス』というタイトルで1枚ものとして再発)に収められて世に出たり。

あれこれバラけていたわけだけれど。今回はその辺の音源を一気にまとめあげる形で2枚組レガシー・エディション化が実現した。ディスク1には『エルヴィス・イン・メンフィス』のオリジナルLP収録曲をすべて曲順通り並べたうえで、70年代に入ってから他のアルバムの収録曲として五月雨式に世に出たメンフィス・セッション音源をボーナス楽曲として追加。そしてディスク2には『フロム・ヴェガス・トゥ・メンフィス(バック・イン・メンフィス)』の収録曲すべてをオリジナル曲順で並べ、その後にやはりこのセッションから生まれたシングル曲の貴重なモノラル・ミックスをずらりボーナス追加している。

当初から1枚ものとしてリリースされた『エルヴィス・イン・メンフィス』は、エルヴィス・ファン以外からも名盤として高く評価されているものの、『フロム・ヴェガス・トゥ・メンフィス(バック・イン・メンフィス)』のほうはエルヴィス・ファンの間ですら人気が今ひとつ。99年、やはりこのメンフィス・セッションの音源を編纂した2枚組『サスピシャス・マインド~メンフィス1969アンソロジー』が出たときも、『エルヴィス・イン・メンフィス』のほうはオリジナルLP通りの曲順で入っていたのに対し、『フロム・ヴェガス・トゥ・メンフィス(バック・イン・メンフィス)』のほうは曲順バラバラでの収録だった。いわばアウトテイク扱い。どちらのアルバムもそれこそ盤がすり切れるほど愛聴してきた身としては実に複雑な気分だった。が、そんなもやもやも、今回のレガシー・エディションの登場で一気に晴れました。

チップス・モーマンのプロデュースのもと、彼のアメリカン・サウンド・スタジオで、当時の南部ミュージック・シーンで大活躍していた旬のミュージシャンたちの強力なバックアップを受け、カントリー、R&B、ブルース、さらにはバカラック・ナンバーまで、様々な音楽要素をごった煮にしながら、エルヴィスは69年ならではの素晴らしい南部ロックンロールを作り上げてみせた。レジー・ヤングのスワンプ風味あふれるギター、トミー・コグビルのファンキーなベース・ライン、アル・ジャクソンの白人版継承者とも言うべきジーン・クリスマンのドライヴ感に満ちたドラム…。地元へ帰って心機一転、意欲に満ちたエルヴィスの歌声の勢いに触発されながら、彼ら腕利きミュージシャン群が存分に本領を発揮した圧倒的なスワンプ・フィーリングが、やがて70年代初頭、新たな黄金時代を迎えるエルヴィス・サウンドのアイデンティティへと結実していくことになるのだけれど。

国内盤も9月には出る。これもライナー書かせていただきました。光栄です。でも、9月になるとビートルズの再発があるから一気に話題をそっちに持っていかれちゃいそう(笑)。泣ける。もったいないので、今のうちに騒いでおきます。64年、ビートルズのアメリカ襲来によってエルヴィスが過去のものになった、みたいな言い方をされることが多いのだけれど、そのビートルズが後味の悪い解散劇を繰り広げ始めた69年、エルヴィスは再度自らの足下を見つめ直す形でこれほど力強い傑作でシーン最前線に舞い戻ってきたわけだ。エルヴィス、すごいっす。まじに。

Chartbusters USA: Special Sunshine Pop Edition / Various Artists (Ace)2009/07/23

Chartbusters USA: Special Sunshine Pop Edition

英Aceは近ごろ、すでにVol. 11まで続いている看板コンピレーション“ゴールデン・エイジ・オヴ・アメリカン・ロックンロール”シリーズのスピンオフものを次々リリースしていて。ドゥーワップ編とか、ノヴェルティ・ヒッツ編とか、バブリング・アンダー編とか、カントリー編とか、ストリングス・インスト編とか、アイデア豊かなコンピを編んでくれているのだけれど。

この“ゴールデン・エイジ・オヴ…”のほうは、だいたい1955~65年あたりの音源を中心に集めたものになっているのに対し、それ以降、66~69年あたりのヒットものを集めた別だてのコンピ・シリーズ“チャートバスターズUSA”というのもあって。今のところVol. 3まで出ているこっちのシリーズでもついにスピンオフものを出してくれた。それが本盤、サンシャイン・ポップ編だ。

日本では“ソフト・ロック”とかいう独特の名前で呼ばれがちなタイプの、爽快なハーモニーをともなった60年代後半サマー・オヴ・ラヴ系の名曲がずらり。タートルズ、クリッターズ、ドン&ザ・グッドタイムズ、キース、ママ・キャス、トミー・ジェイムズ、ビーチ・ボーイズ、ドノヴァン、ペパーミント・レインボウ、ヤング・ラスカルズ、フィフス・ディメンション、トーケンズ、フレンズ・オヴ・ディスティンクション、スパンキー&アワ・ギャング、ハーパース・ビザールなどなど、適度な洗練と、適度なキャッチーさと、適度な楽観と、ほんのちょっぴりの難解さとが混在する名曲が次々登場する。夏向きですよ、これは。

ロバート・ジョンの「イフ・ユー・ドント・ウォント・マイ・ラヴ」やボビー・ヴィーの「ルック・アット・ミー・ガール」、フォーラムの「ザ・リヴァー・イズ・ワイド」あたりが入っているのがうれしい。いつものことながら、さすがはAce。同社がリリースしているもろもろのコンピレーションの収録曲とほとんどダブリなし。今回ダブっているのはチャートバスターズUSAシリーズのVol. 1に既収録のレモン・パイパーズ「グリーン・タンブリン」のみだ。Aceのコンピは廃盤も少ないし。これからアメリカン・ポップスの世界を総括的に体験しようという方がいたら、Aceのコンピを1枚ずつこつこつ集めていくのが最良かも。

やはりAceが出している“ランド・オヴ・サウザンド・ダンシズ”シリーズのスピンオフとして本盤とほぼ同時にリリースされたツイスト編『All Twistin' Edition』もごきげんです。

Electric Dirt / Levon Helm (Dirt Farmer Music/Vanguard)2009/07/14

Electric Dirt / Levon Helm

SG@東京ドーム。

というと、普通われわれプロ野球ファン的にはヤクルト×巨人なわけですが。今回はサイモン&ガーファンクル。先週の土曜日に見てきました。よかったなぁ。素晴らしかった。最近は仲がいいんだか悪いんだか、その辺のことはよくわからないけど。やっぱりこの二人が並んで歌うと魔法が生まれる。ぐっときました。

内容的には、03年以降のオールド・フレンズ・ツアーの延長線上で。一緒に見に行った萩原祐子もブログで感想を書いているので、ぜひそちらもご参照ください。彼女も触れていたけれど、「ミセス・ロビンソン」の途中でパーカッションの人がマラカスを振り始めて、ギターがトレモロかけた音色で二拍三連のコード・カッティングを始めて。あれー…と思っていたら、そのまま「ノット・フェイド・アウェイ」に突入した瞬間は特に泣けた。盛り上がった。以前のセントラル・パークのコンサートでも「コダクローム」から「メイベリーン」になだれ込んだり、こういうお遊びを彼らはよくやるのだけれど。

サイモン&ガーファンクルというと、“洗練されたフォーク”とか“新緑のようなハーモニー”とか、そういう側面からばかり語られがちだけど。彼らのロックンロール感覚はなかなかのものだ。さすがニューヨーカー。もともとエヴァリー・ブラザーズをパクったトム&ジェリーなるロックンロール・デュオとしてデビューしているわけだし。今回もジーン・ヴィンセント、楽しそうに歌ってたし。サイモンのソロ・コーナーで披露された「グレイスランド」でも、いつにも増してロカビリーっぽいギター・フレーズが聞かれたし。

サイモン&ガーファンクルといして大当たりする前、サイモンにはホワイト・ドゥーワップ系のソロ・シングルがあった。ガーファンクルにもティーンエイジ・アイドルっぽいソロ・シングルがあった。泣く子も黙る大ヒット「明日に架ける橋」にしても、フィル・スペクターゆかりのミュージシャンを多数集め、スペクター愛用のスタジオで、スペクターの画期的な録音ノウハウを活かした壮大な音像の作品で。要するに、声が高いライチャス・ブラザーズというか。そんな感じだったし。

なわけで、ああ、こいつらやっぱりロックンロールが大好きなニューヨーカーなんだなぁ、と。そんな事実をほのぼの再確認できたうれしい夜でした。もちろん、客席で周りを見渡してみると、そんなことどうでもいいというか、だからどうしたというか、「ノット・フェイド・アウェイ」なんかもともと知らないというか、そういう空気で。いや、別にそれでいいと思います。そういう楽しみ方でも十分元が取れるクオリティをたたえた音楽なわけで。特に不満もないんだけど。

ただ、エヴァリーとかバディ・ホリーとかジーン・ヴィンセントとかライチャスとかを知ったうえで聞くサイモン&ガーファンクルってのもいいんだよなぁ。そういう楽しさをもっと日本のリスナーにも味わってもらいたいもんだなぁ、と。余計なお世話とは知りつつ、ついつい思ってしまうおせっかいなハギワラなわけです。ポップスは学習だから。知れば知るほど面白くなるから。

今日紹介するリヴォン・ヘルムの新作もそう。もちろんこれ単体でごきげんに痛快な1枚なんだけど。全11曲中、書き下ろしは1曲のみ。残りがすべてカヴァー曲で。そのオリジナル・ヴァージョンを知って聞くのと知らないで聞くのとでは別物というか。できることなら、グレイトフル・デッド、ステイプル・シンガーズ、ハッピー&アーティ・トラウム、マディ・ウォーターズ、スタンリー・ブラザーズ、ランディ・ニューマン、オラベル、ニーナ・シモン…と、このあたりも知ったうえで、この新作の良さをみんなで分かち合えたら最高なんだけどな、と。考えてみれば、毎月CRTイベントをやっているのも、そういう思いからだったりします。このリヴォンの新作の国内盤が出るのは来月かな? 再来月かな? とにかく、そういう思いをこめて、各楽曲の出自に触れたライナーを書かせてもらいました。興味のある方はぜひ国内盤の発売を待ってやってください。ソニーから出ます。

96年に喉頭ガンと診断されて、もうかつてのようには歌えなくなっていたリヴォンですが。やっぱりこの人は並じゃない。奇跡的な回復を遂げて、またあのソウルフルな歌声がよみがえった。往年の太さはさすがにないけれど、渋みと説得力が歌声に加わって。そんな歌声を07年、傑作アルバム『ダート・ファーマー』に刻み込んで。大復活。グラミーにも輝いて。で、その続編として勇躍リリースされたのが本盤『エレクトリック・ダート』。

プロデュースは前作同様、ラリー・キャンベル。カントリー・ロック・バンド、オラベルのメンバーとしても活躍中の娘さん、エイミー・ヘルムも前作同様しっかりお父さんをバックアップ。アパラチアン系のアコースティック・サウンドが印象的だった前作に対して、今回はバンド・サウンドというか。リヴォンの柔軟で躍動的なドラミングも大いに活かされた仕上がりになっている。ゴスペルっぽさが強調されているのもいい感じ。ホーン・セクション入りの曲が4曲あって。2曲がアラン・トゥーサンのアレンジ。残り2曲がニッティング・ファクトリー系のスティーヴン・バーンスタインのアレンジ。

ザ・バンドでも取り上げていた曲の再演も含めてマディ・ウォーターズのカヴァーが2曲あって。これは前作のレコーディング・セッションで録音されたものらしい。どちらもストレート・アヘッドなアコースティック・ブルース・サウンド。これもいかしてる。ボブ・ディランより1歳上の69歳。ディランとかこの人とかの現在を見ていると、もう圧倒されるしかないです。『トゥゲザー・スルー・ライフ』と組にして聞きたい1枚っすね。