Ya-Ka-May / Galactic (Anti/P-Vine)2010/01/19

Ya-Ka-May / Galactic

こういうことを妙に俯瞰した視点から語るのはどうなのかなとも思うけれど。毎年、年末年始なると訃報も増える気がする。以前、NHK-FMでオールディーズ番組をやらせていただいていたころも、年末年始に追悼特集が集中していたような記憶が…。寒いってこともあるけど。んー、寂しい季節ですね。

世代ってのも大きい。最近悲しい知らせが届けられたボビー・チャールズにせよ、浅川マキさんにせよ、小林繁投手にせよ、その訃報に接して自分の人生の歩みと重ね合わせながら複雑な思いをしみじみかみしめたのは、たぶんほとんどが40歳代半ばから上の世代だろうし。そのくらいの世代になると、どうしたって自然と自分に影響を与えてくれた先達の訃報に接することが多くなるものだし…。

ぼくなんかもう53歳だから。これから、ますます悲しい知らせが増えるんだろうなぁ。Twitterでも書かせてもらったことだけれど。自分がいきいきと属していた世紀の文化がとうとう本格的に終わりを告げようとしているんだな、みたいな。そんな気分になってます。

それだけに、たとえば以前ここでも取り上げたダイアン・バーチとか、ノージが先日ブログで紹介していたフィンドレイ・ブラウンとか、われわれの世代がかつてぞっこんだった音楽性なり文化なりを、世紀を超えて受け継ぎながら自分なりの新しい音楽をのびのび構築している若いミュージシャンに出くわすと、ちょっとだけ、ささやかにうれしくなったりする。

この人たちもそう。まあ、今となってはさほど“若い”ってわけでもないけれど。ギャラクティック。90年代から、古きよきニューオリンズR&Bの豊潤なグルーヴを新世代なりの感覚で再構築して聞かせてくれていたジャム・ファンク・バンドで。頼もしい連中だなぁと、ぼくも新作が出るたび楽しみにしてきたものだけれど。特に今回、来日に向けて日本先行発売された新作はぼくのようなおっさん音楽ファンのツボにびたっとハマるごきげんな一発となった。

前作ではぐっとヒップホップに接近して、強靱なビート感覚をいっそう研ぎすましてみせたギャラクティックだけれど。ほぼ2年半ぶりのリリースとなる今作では、前作の感触はそのまま、アラン・トゥーサン、アーマ・トーマス、ワイルド・マグノリアスのビッグ・チーフことボー・ドリス、ウォルター“ウルフマン”ワシントンら地元ニューオリンズの偉大な先輩たちをゲストに迎え、温故知新ムード満点の最新型ニューオリンズ・ファンクをぶちかましてみせる。もちろん、先輩ばかりでなくニューオリンズ新世代組もそれなりにゲスト参加。燃えます。おっさんなりに、ですが…(笑)。

Nippon Girls: Japanese Pop, Beat & Bossa Nova 1966-70 / Various Artists (Big Beat/Ace)2010/01/09

Nippon Girls: Japanese Pop, Beat & Bossa Nova 1966-70

年末年始は BlackBerry Bold のOSを、海外で公開された5.0に上げたり、メモリ消費が凄まじいのでまた4.6に戻したり、でもやっぱり新しいほうがいいなぁ…と、また5.0にしたり。音楽聞いたりテレビ見たりしながら、そんな作業にいそしんでだらだら過ごしてしまった。あんまり意義深くない休みだったけど。楽しかった。そんなもんっすね。

例年この時期、新譜の入荷も少ないので、今年もまた20~30年代の古いところからこれまであまり接していなかったものを毎日ほじくり返してました。これもまた楽し。近ごろあちこちで書かせてもらっていることだけれど、トシとってくると特に、曖昧な未来への期待感よりも、自分が知らずにやり過ごしてきてしまった過去に、あるいはまだ生まれてもいなかった時代に埋もれる“まだ見ぬ宝”みたいなものへの興味のほうがつのってきて。やめられません。

なので、このホームページで何か紹介したいなぁと思っても、なかなか(笑)。だいたい新譜が少ないしなぁ。でも、新年のご挨拶がわりにブログを更新しましょう。英Ace傘下のビッグビート・インターナショナルからのリリース。60年代ガール・グループものの鬼コレクターであり日本の昭和40年代歌謡ポップスにも精通している chachacharming.com のシーラ・バーゲル嬢が編んだ本盤。黛ジュン、中尾ミエ、大原麗子、木の実ナナ、いしだあゆみ、朱里エイコ、弘田三枝子、山本リンダ、渥美マリ、小山ルミなど、66~70年代のグルーヴィなジャパニーズ・ガール・ポップを満載。

シーラさんはぼくのラジオ番組『月刊萩原健太』にゲストで出ていただいたこともあるのだが、この種の音楽を奇異なものとして風流に楽しんでいるわけではなく、そこに潜むきわどいかっこよさを本気で味わっているようで。その目線が今回の編纂にも貫かれている。詳細なライナーノーツも面白い。日本人とはまたこだわりのポイントが違う個所もあったりして。ぼくが普段洋楽のライナーで書いているのもこの逆パターンなんだよなぁ…。こういう充実した歌謡曲コンピが海外から出てくるってのは複雑だけど。でも、新鮮。

Jガールズ、キューピッツ、響かおる、マーガレット、野平ミキなど、中古屋好きの胸をときめかせる名前もたくさん。シーラさん、中村晃子が好きだって言ってたのに、今回は入ってませんでした。『ニッポン・ガールズ~和製ポップス、ビート歌謡&ボサノバ』って邦題でPヴァインからも出ます。

Not Fade Away: The Complete Studio Recordings And More / Buddy Holly (Geffen/Hip-O Select)2009/11/23


Not Fade Away
 さて。いよいよ明日、ひと月フライングのCRTクリスマス・ナイトです。準備しながらクリスマス・ソングをいろいろ聞いていたら、なんかドリーミーな気分になってきちゃって。いいですねー、クリスマス・ソング。以前も書いたことがあったと思うけれど、何年か前、通販オンリーでクリスマス・ソングばっかり集めた5枚組CDボックスというのを編纂したことがあって。確か9月くらいからクリスマス・ソング漬けになっていたんだよなぁ。あの年は1年の後半、ずっと幸せ気分でした。

 そんな気分をみなさんで分かち合いましょう。今年は強烈な一撃、ボブ・ディランの『クリスマス・イン・ザ・ハート』のリリースもあるし。当然CRTとしてはこのアルバムについて深くハマり込んでいく予定です。ディランさんの所属レコード会社さまからもうれしいクリスマス・プレゼントをたくさんいただきました。本日までにご予約の方には福袋サービスもあります。物で釣ってるみたいですが(笑)。それはそれとして、楽しい内容になると思います。しかも今回はご愛顧感謝のナイスプライス! 左の情報欄を参照して、こぞってのご参加、お待ちしてます。幸せ気分を爆音/爆画面で共有しましょう。

 というわけで、今回のピック・アルバム。Hip-Oがまたまたかましてくれました。その名の通り、偉大なロックンロール・オリジネイター、バディ・ホリーが残したスタジオ・レコーディング、自宅デモなどを総まくりしたCD6枚組ボックス・セット。バディ・ホリーが悲劇の飛行機事故で他界してしまったのが1959年2月。それから50年という一区切りイヤーを締めくくるにふさわしい素晴らしい労作の登場だ。全世界7000セット限定です。

 バディ・ホリーの場合、1979年に編纂された必殺のLP6枚組ボックス『The Complete Buddy Holly』というのがあって。アメリカン・ロックンロール・ファンにとってはバイブル的アイテムだった。ところが、その後世の中がCD時代に入ってから、このボックス・セットがなぜか一向にCD化されずじまい。コンピレーションはあれこれ出るものの、どれも微妙に中途半端。誰もが同じ思いだったのか、このLPボックスを下敷きに、内容をさらに充実させたブートレッグCDボックスが何種類かリリースされちゃったり。ちぐはぐな状態がずっと続いていた。

 没後50年にあたる今年、このあたりのファンの不満を解決するべくアメリカのMCA/ユニバーサルがようやく内容の濃い2枚組アンソロジー2種類を出して。それは本ブログの2009年2月のエントリーでも紹介しました。基本的に書きたいことは大方そちらで書いてしまっているので、ぜひ参照していただきたいのだけれど。今回のHip-Oセレクトの6枚組CDボックスは、そのアンソロジー2種をさらに発展させた仕上がり。なんと今回初お目見えのアンダブド・ヴァージョンとか、未発表レコーディングとかも掘り起こされている。まだありましたか。うれしい。

 大判の本の形になっているパッケージも素敵だ。写真も満載。まだ読み切っていないけれど、ライナーも充実している。今年の再発盤ナンバーワンだな。ビートルズも吹っ飛ぶ。当たり前だね。バディ・ホリーなくしてビートルズなし、だもの。

Raditude / Weezer (Geffen)2009/11/15

Raditude / Weezer

またひと月くらい更新せずじまい。Twitterのせいばかりじゃないな。近頃はTwitterもあんまり積極的にやってないし。向いてないのかも(笑)。

それはそれとして。ライ・クーダー/ニック・ロウの来日公演。ご覧になった方はみなさん同じ感想でしょう。むちゃくちゃ良かったです。年齢を重ねて、二人とも思い切り楽に、自由になっていて。でもお互い、相手の音もしっかり聞いて、一瞬一瞬に反応する鋭い反射神経みたいなものにはさらに磨きがかかっていて。鉄壁。無敵。

近年のボブ・ディランやニール・ヤングを見ていても思うことだけれど。これはロックだな、と。昨日今日の若いミュージシャンには絶対にできないロック。いいもの見せていただきました。はらんでいる音楽性が深く広大すぎるだけに、聞くほうにもそれだけリスナーとしてのキャリアが必要かもしれなくて。彼らの出す音が若い人の耳にどう届くのか、まったく想像もつかないものの。おっさん音楽ファンとしては、珠玉のひととき。やー、トシはとってみるもんだね。

全曲、堪能しました。個人的には後半、ライ・クーダーが生ギターを抱えたパートがやはりぐっときた。ライ・クーダー自身はあまり生ギターに思い入れがあるわけでもなさそうだけど、70年代の彼に大影響を受けたリスナーとしては、どうしても生が、ね。たまらんです。特に、女性コーラスによる「インポシブレ・オルビダルテ」(だったかな? 記憶が曖昧)から「ヒール・ハフ・トゥ・ゴー」へと突入する瞬間、燃えました。

で、今回のピック・アルバム。この人たちも、還暦になってもなおロックし続けてくれるのでしょうか。してくれそうだな。そんなことを思わせる新作です。いい仕上がりだったものの、良くも悪くも「こいつらトシとったなぁ」と思わせる局面もあった前作はファンの間で賛否両論を巻き起こしたけれど。今回は再びリヴァース・クオモが自らの立脚点というか、出発点というか、その辺を見直したかのような快作。外部のソングライターの力も借りつつ、ウィーザーらしいポップ感をどかんと炸裂させている。またまたいい曲目白押し。けっこう暗中模索期もあったけれど、結果的にはいいキャリアの積み方をしているのでは?

基本的には10曲入り。US版デラックス・エディションはそれに4曲入りのディスク2が付く。欧版はディスク1のほうにボーナス1曲追加。日本版デラックス・エディションはディスク1にさらにもう1曲追加した全16曲。これがいちばんお得かな。でも、日本のiTunesストアでは17曲入り、USのiTunesストアでは29曲入りが出てます。ややこしいのぉ…。

The Sun Came Out / 7 Worlds Collide (Columbia/Sony)2009/10/18

The Sun Came Out / 7 Worlds Collide

さあ、CRT“ライ・クーダー・ナイト”、近づいてきました。お酒飲んだり、つまみ食ったりしながら、聞いて、語る音楽としてライ・クーダーって絶好のような気がします。つーか、おっちゃんたちは70年代、よくそんなことしてました(笑)。ライ・クーダーって、たとえばカヴァー選曲のセンスとかをマニアックに突っ込めばどこまでも突っ込める人だし、ギタリストとしての腕前に特化して語っても語り尽くせないほどのテクニシャンだし、でもどこかのんびりした、親しみやすいたたずまいもあって。語りがいがあるからなぁ。

20日はみんなで、またライ・クーダーの魅力を爆音/爆画面で多角的に味わいましょう。青山さんだけでなく、CRTギター長屋仲間の中森さんももしかしたら…。左の情報欄をご参照のうえ、こぞって参加してください。待ってます!

前回の更新のとき、ボブ・ディランのクリスマス・アルバムのことにちらっと触れたら、かなり反響ありました。国内盤待ちます…っておっしゃってくださった方も多くて。ありがとうございます。ディランのクリスマス・アルバムに関して、もうひとつうれしい情報を書いておくと。クリスマス・ソングといえばコーラスがつきもので。今回も7人のシンガーがコーラス隊としてクレジットされているのだけれど。そこに、アマンダ・バレットとアビー・デウォルドという名前が入っている。この二人、ロサンゼルスを拠点に活動するキュートでノスタルジックな女性アコースティック・デュオ“ディティ・バップス”のメンバー。04年、ミッチェル・フルームのプロデュースによるデビュー・アルバムをリリースして以来、すでに3枚の素敵なフル・アルバムを発表してきているのだけれど。日本では知名度が今ひとつかも。今回のゲスト参加で、注目度が上がるといいな、なんて思ったりしております。彼女たちの音楽、Youtube にもいろいろアップされているので、興味のある方はぜひ。

これとかこれとか大好きっす。

というわけで、今回もディランのクリスマス・アルバム押しの内容ですが。ピックアップ・アルバムは別の物でいきます。ニール・フィンが呼びかけ、レディオヘッド、ウィルコ、ジョニー・マーなどが集まって、貧困の克服を目指す国際的支援団体“オックスファム”をサポートするためのチャリティ・コンサートを行ったのが2001年。ちょっと前のことかと思っていたら、もう8年前っすね。ライヴの模様はCDやDVDも話題になったけれど、そのときのプロジェクト名“7ワールズ・コライド”のもと、今度はスタジオ・アルバムが登場しました。

今回も同様にオックスファムをサポートするためのチャリティ・アルバム。前出の顔ぶれに加えてKTタンストール、ビック・ルンガ、パーカッション・アンサンブル“フロム・スクラッチ”のドン・マッグラシャンらも参加している。ソウル・コフィングのセバスチャン・スタインバーグやリサ・ジャーメイノなどは前作から引き続きの登場。世代/ジャンルを超えるスーパー・プロジェクトながら、あまり全体がでこぼこすることもなく、参加ミュージシャンそれぞれの味がいい感じに溶け合っている。お互いの持ち味をお互いに知り抜いている感触というか。

ニール・フィンがニュージーランドの人だってこともあるのか、英米の感触がクールに俯瞰した視点から混ざり合っているのも面白い。80年代っぽい、ちょっと内省的な美メロ感覚が基調になったポップ・アルバムに仕上がっているけれど、それ以前の時代のポップ・ミュージックに対する憧憬みたいなものも随所に聞き取れて、胸がきゅっと高鳴る局面多し。個人的にはウィルコ絡み、というかジェフ・トウィーディ絡みの楽曲が特にぐっときます。1枚ものと2枚組とあるみたいだけど、ぼくは2枚組のほうでたっぷり楽しみました。